北京五輪の陸上男子110Mハードルで連覇の期待がされていた劉翔選手が、右足かかと付近のけがにより、スタート直前(フライング後2度目)にレースを棄権した。
この結果、中国のインターネットでは、劉翔選手を罵倒する声であふれかえったという。

劉翔選手は、1983年7月13日生まれの25歳。
前回アテネ五輪では12秒91の世界タイ記録で金メダルを獲得し、2006年7月のローザンヌ国際では12秒88の世界記録(注:2008年にキューバのロブレス選手に記録は破られている)を樹立した中国の英雄である。
日本選手でたとえるなら、女子マラソンの高橋直子選手とか、陸上競技ではないが水泳の北島康介選手のような存在なのだ。
個人的には、北京五輪の開会式の聖火の最終点火者が劉翔選手になるのではないかと思っていたぐらいだ。

そのような国民的英雄なので、中国オリンピック委員会は劉翔選手を「小出し」にする大会日程を組んでいた。
どういうことかというと、110Mハードルは、1次予選、2次予選、準決勝、決勝と4レースあるが、レースを4日間で計画していたのだ。
100Mも同じように決勝を含めて4レースあるが、2日間で行われることを考えると異例の措置である。

しかし、そんな偉大な成績を残してきた英雄の「足の故障による棄権」に中国国民の反応は厳しかった。
インターネットには、「この脱走兵め」「意気地なし」「13億人を傷つけた」「がっぽり儲けているのに最後はこれか」「練習に専念せずタレント活動ばかりしているからだ」「体調管理はスポーツ選手の基本中の基本」といった批判の書き込みが万を超えた。
また「負けるのが怖いから仮病したのでは」「中国の13億人と56の民族を背負っている」(ゼッケンNo.が1356だったため)、「中国の名誉のためにもあきらめてはいけなかった。はってでもゴールまで行くべきだった」といった厳しい意見も多かった。

昨日までの英雄が一夜にして叩かれる理由は、格差社会の特徴なのだろうか。
110Mハードル決勝のチケットは400元(約6000円)だから、日本の貨幣価値で考えれば10万円以上する。
また、アテネ五輪後の劉翔選手は、広告収入だけで8000万元(約12億円)あり、2億円の豪邸に住み、高級外国製自動車を乗り回していたセレブ生活をしていた。
つまり、庶民のやっかみである。
女子マラソンで連覇が期待されていた野口みずき選手が大会前に欠場を決めたが、批判の書き込みはこんなにも多くはなかった。
レース直前の棄権が余計に「劉翔は逃げた」との国民感情を煽ったのかもしれない。

読売新聞のインターネット版によると、劉翔選手に関する書き込みの中に「異常な社会だ。非常に多くの中国人が、責任と義務を他人に押しつけようとし、その人が成功すれば天まで持ち上げる。そのかわり、失敗すれば地獄に落とす」というものがあったそうだ。
スポーツに限らず、まさに現在の中国の世相を表しているコメントだ。
急激な経済成長と広がる格差社会は、人の心も殺伐としたものにしてしまうのだろうか。

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