病気で半年休んだ選挙管理委員・本橋将文氏(自民区議OB)に月額24万2000円、合計約140万円の報酬を払い続けていた問題で、筆者は本日午後にも住民監査請求を申し立てることにした。申立人は筆者のほかに、区議の奥山たえこ氏、渡辺容子氏、川浪寿見子氏、檜垣宏道氏ら区民有志が加わる。まだ増える可能性がある。

 自主的に返金する意思があるかどうか本橋氏に確かめておこうと2度ほど電話をしたがいずれも不在だった。けさもう一度電話をかけてみるつもりだ。返金するというのであればわざわざ面倒くさい手続きをすることもない。現職議員でもないので区に報酬を返すことが公職選挙法の禁止する寄付行為にとわれるおそれもないだろう。

 申立書の内容はすでに紹介したが、訂正した提出版を再掲載する。

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住民監査請求書
(勤務実態がない選挙管理委員の報酬にかかる不当利得返還請求、および財産の管理を怠る事実の確認請求)

2011年2月10日
杉並区監査委員様

             請求人(計 人)
             三宅勝久  (連絡先)
            〒166-0004
            杉並区阿佐ヶ谷南2-22-12第二森屋荘8号
             (電話・ファクス)03-3317-9025
                     070-5573-5805

            ほか



1 請求の趣旨

(1)杉並区長は元選挙管理委員・本橋文将氏に対し、2010年5月分から同年10月分の報酬額に相当する不当利得としての金員140万5162円を請求せよ。

(2)杉並区長は元選挙管理委員・本橋文将氏に対し上記金員に相当する不当利得返還請求権を有するところ、この行使を怠ることは違法であることを確認せよ。


2 請求の原因

(1) 当事者
請求申立人はいずれも杉並区住民である。

(2) 事実関係
 本橋文将氏は2007年12月27日付で選挙管理委員に就任し、2010年10月25日に自己都合で辞任した。本橋氏には就任以来「杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁済に関する条例」(以下「本件報酬条例」という)に基づいて毎月24万2000円の月額報酬が払われてきた。ただし2010年10月分については日割計算により6日分を控除した19万5162円が支給された。
 
 本橋氏は2010年5月上旬に健康を害し、これを理由に同月12日にあった委員の仕事を欠勤した。以降同年10月25日に辞任するまで復職することはなかった。この欠勤期間中、選挙管理委員としての職務を果たすことはいっさいなかった。入退院を繰り返すなど勤務不可能の健康状態が続いていたのである。

 申立人三宅勝久が杉並区選挙管理委員会事務局に電話で確認したところでは、欠勤開始から辞職までの間に本橋氏が受け取った報酬の内訳は次のとおりである。

   2010年5月=24万2000円
        6月=24万2000円
        7月=24万2000円
        8月=24万2000円
        9月=24万2000円
        10月=19万5162円
       (合計 140万5162円)

 上記報酬について、現在のところ本橋氏から返還、あるいは返還の意思表明はない。 

(3) 違法・無効性
 地方自治法の規定によれば、非常勤行政委員の報酬は勤務実績に対する純粋な反対給付であり、生活給としての性格はいっさい持ち合わせていない。そのことは、立法過程の審議内容や裁判例からも明らかである。
 ところが本件の場合、勤務実態が皆無にもかかわらず約半年もの長期にわたって報酬を支払ったのである。こうした支出の根拠となった本件報酬条例の月額規定は地方自治法203条の2第2項本文ならびにただし書きの立法趣旨に反し違法である。議会の裁量権を逸脱している。
 本件支出は違法な条例に基づいて支払われたものであり、給与条例主義に反して違法・無効である。

(4) 月額支給の違法制について
 本件報酬条例の違法性は、勤務実態のいかんにかかわらず月額制をとっている部分にある。現行条例では、病気に限らず、自己都合で欠勤した場合においても月額が払われることになる。こうした現象を可能とした本件報酬条例の仕組みには欠陥がある。地方自治法203条の2本文の原則にしたがって日額制にするのが欠陥解消のもっとも合理的な方法である。

(5) 財産管理を怠る事実
 選挙管理委員を欠勤していたにもかかわらず支払われた報酬・計140万5162円は本橋氏の不当利得にあたり、杉並区長はこれを返還請求する権利を有している。しかしながら現在にいたるまで不当利得返還請求権を行使しておらず、よって財産の管理を怠る事実が存在する。


3 外部監査

 なお杉並区の各監査委員は、去る2010年9月30日に東京地裁で言い渡された監査委員報酬をめぐる判決の内容でも明らかなとおり、その監査能力に疑義がある。すわなち四居誠代表監査委員および茂木信監査委員は、上記判決に先立ってなされた住民監査請求の監査において、監査委員自身に支払われた報酬に違法性があることを指摘することができなかった。また斉藤常男・小野清人の各監査委員は公認会計士などの有資格者ではなく、監査委員就任にあたって監査に関する技能ならびに見識が考慮された形跡もない。単に議員間の政治的力関係によって得たポストであることは明白であり、基礎的な監査事務能力ならびに公正さに疑問がある。これらの区監査委員では厳正な監査が期待できない。

4 根拠法規

 地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。併せて、同法第252条の43第1項の規定により、当該請求に係る監査について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めます。

5 事実証明書一覧
新聞記事(「東京新聞」「読売新聞」「朝日新聞」「毎日新聞」)
「杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁済に関する条例」の写し
「杉並区選挙管理委員会事務局に対する問い合わせメモ」
「杉並区の選挙だより」124号