「東金幼女殺害事件」の犯人として未成年者略取・殺人・死体遺棄罪で起訴されている被告人・勝木諒氏の公判が千葉地裁で続いている。この事件は弁護団が当初、無罪を主張する方針をとっていたが、主任弁護士が辞任、その後犯人であることを認める主張に転換するという混乱した展開をみせている。


 公判を聞いている限りでは、彼が犯人なのか、あるいは事件に関与していたとしても検察がのべている犯行状況がはたして本当なのか、筆者は疑問を持っている。おそらく傍聴している人の多くがそうした感想をもったのではないだろうか。たとえば、誘拐して自宅に連れ帰ったとされるが、その間の連行の様子は相当に大変な作業だったと想像できるもののほとんど具体的に説明されていない。


 ところで、事件そのものは別に機会に触れるとして、裁判の傍聴に関してきょう、面白いことを発見した。その経緯はおよそ以下のとおりである。


 入廷の際、緑色の制服を着た警備員に身体検査をされた。かばんを預け、ボールペンですら鳴るほど感度を上げた金属探知機で徹底的に調べた上で入廷しなければならない。前回の公判でもされたことだ。


 裁判の途中、休憩が何度も入ったが、出入りするたびに検査を強いられた。最初は我慢していたものの、4回目くらいになってさすがにうんざりしてきた。筆者は、警備員にこう言った。


「検査受けなきゃいけないんですか」


「そうです。しなければ入廷できません」


 と警備員は言った。


 そこで筆者は続けて尋ねた。


「検査に協力する気持ちはありますが、その前にあなたが本当に裁判所の職員かどうか確認したいので、身分証をみせていただけますか」


「いや、それはできません。このとおり裁判所の職員です」


と警備員氏は制服の肩についている水色のマークを指差した。


「それだけじゃわかりませんよ。なぜ出せないのですか。身分証をださなくていいという規則があるのですか。その根拠がわかったら検査うけますよ」


 筆者は言った。


 別の警備員がひきとり、「総務課に聞いてくれ」といった。それきり何を言っても黙って目をそらして、知らんフリをした。


 法廷ははじまっていたが中に入ることができないまま押し問答が続いた。誰が呼んだのか、背広の職員が何人か集まってきた。刑事部の次席書記官という人物が、「私が現場の警備責任者」といって現れた。彼の説明はこうだった。


「裁判長の指示で検査をしている。刑事部の要請で警備要員の派遣を東京地裁に依頼した。彼らが裁判所職員であることは私が現認したからよい、名乗る必要はない」



 そのやりとりを、地元の司法クラブの加盟社であろう記者が、ソファでパソコンを打ちながらにやついた表情でちらちら見ている。裁判所から腕章を与えられたクラブ記者は、荷物を預けることもなく、金属探知機の検査も受けることなく法廷を出入りしている。



 「クラブ記者を検査しないのはなぜですか」


 業を煮やした筆者は言った。次席書記官はこう答えた。


 「私たちが警備を担当しているのは、一般傍聴人だけですから」


 身体検査は一般傍聴人だけ。記者クラブ人は「一般人」とは違うということらしい。こんな意味のない、中途半場で差別むきだしの「警備」が、国民の税金でやられている。その現場をこの目で見ることができただけでももうけものだったと裁判所のみなさんに感謝している。