緊張が解けたのか、部屋に入った瞬間立っているのさえ辛かった。
良く部屋まで戻れたと自分自身に感心しながら崩れるように玄関に座り込んだ。
「はぁ・・やばいな・・」
素直に社さんに送ってもらえばよかった・・・・
そんなことを考えながら蓮は最後の体力を使い果たしたのか、玄関に座り込むと壁に寄りかかり瞳を閉じて休憩した。
・・・・ほんの数分で良いから・・ここで眠るか?
動きそうにない自分の両足を思い蓮はため息をつく。
考え事をするのさえおっくうで、何とか脱いだ靴を無造作に玄関に放り投げると、次にネクタイを緩め床に寝そべった。
「まずいな・・」
グラグラと揺れる視界で気持ち悪さが倍増する。
寒さで体中がガタガタと震えだすのに、暖かい場所まで移動できるような気がしなかった。
このままでは風邪を悪化させてしまうか・・
仕方なく社を呼び出そうと胸ポケットにしまってあった携帯電話に手を伸ばすが、手にしたところで意識がもうろうとしてきた。
電話をかけていないのに自分を呼ぶ声が聞こえた気がして蓮はニッコリと微笑む。
・・恋を自覚した途端に・・これか・・
目の前にキョーコの幻覚が見える。何かを叫んでいるのに
その声が聞こえない。
「ごめん・・動けないんだ・・」
不安そうな彼女の瞳が俺をじっと見つめる。今にも泣きだしそうな顔の彼女の顔を見ると嬉しくなる自分に驚いた。
「大丈夫・・少しだけ休ませて・・」
そんな心配そうな顔を見せないでほしい。
抱きしめたいのに腕が上がらないことに蓮はがっかりしながら、夢の中でキョーコに会えたことで素直に自分の心の内を伝えた。
「そばにいてくれないか・・・・最上さん・・君にいて欲しいんだ・・」
驚いた表情で自分を見つめるキョーコに蓮は再び神々スマイルを向けた。