ミシカの言葉を思い出した訳ではなかった・・
あどけない笑顔が頭を過った時事に蓮は小さなため息をついた。


彼女を自宅まで送り、部屋に戻るとやっと訪れた眠気もいつの間にか覚めていた。
再び眠気を誘うようにあれこれ考えてみたものの、飲む気分にもなれず、ただボーっとソファーの上でくつろぐ以外他に方法がなかった。


「はぁ~このまま泊まって貰ったほうがよかったな・・」
ソファーに寝転がりながら独り言をつぶやき、そんなことを思っていた。
瞳を閉じてもいっこうに訪れない眠りへの誘惑。


そして気が付けば、ドレス姿のキョーコを思い浮かべていた。


まさか・・惚れた訳でもないだろう?


自分に問いただすように記憶の中に身をゆだねる。


彼女はどちらも本物だと言った。
そして、俺にそのどちらも好きではないことに自分自身で気がついているだろうと挑戦的な瞳を向けてとクスリと笑った。


その時の少し冷たい表情に深いため息がもれる。


・・嫌いなわけではない


ただ彼女の前に立つと自信がもてず、自分がなにもできない男になった気がして落ち着かなかった。
今までなら騙せていた笑顔も、彼女には通用しなかった。
頬を染めるどころか、寂しそうに見つめられて、今まで築きあげたものが、すべて否定されるようで、何一つ彼女の気を引き留めることができなかった。


そうか、俺は何も通用しない彼女が怖いん・・だ・・・・


無様な自分を見せたくなくて、それを隠そうとして彼女に辛く当たってしまったのか・・


社さんに見せるような笑顔を自分にも見せてほしいと思うのはどういうことだろう・・


自分を分析するように考え巡らせていると、優しい睡魔が蓮を包み込んだ。