サイエンスカフェにいがたで、バッハのお話とチェンバロの素敵な演奏を聴いてきました。

今回のテーマは「バッハって、どうして“音楽の父”なの?」。ゲストは林豊彦さん(新潟大学 自然科学系教授[工学部・福祉人間工学科]/新潟市障がい者ITサポートセンター長)です。チェンバロやパイプオルガンに大変造詣が深く、これまでにも、サイエンスカフェにいがたでパイプオルガンやチェンバロに関して熱く語っていらっしゃいます。趣向を凝らした演出も魅力的!話す、歌う(バリトン)、演奏する(リコーダー)、多才な方なのです。チェンバロの演奏は古楽ファンには嬉しい、飯田万里子さんで、会場のジュンク堂書店新潟店 カフェスペースに運ばれたチェンバロは、なんだか、いつもその場所に置かれているかのように、しっくりと馴染んでいました。


“音楽の父”と称されるバッハ(ヨハン・セバスティアン・バッハ)。

教科書にも、“音楽の父”とあったと記憶しています。

どうして“音楽の父”なのでしょうか。偉人を○○の父や母と指すことが他にもありますね。音楽の母 ヘンデル、医学の父 ヒポクラテス、哲学の父 ソクラテス、歴史の父 ヘロドトス、日本の鉄道の父 井上勝など、思いつくだけでもいろいろと浮かんできます。教科書では省略されていた、バッハ=音楽の父の途中式を見ていくような林豊彦さんのお話は、バッハの生涯を追うバッハ年表と当時の日本史、西洋音楽史もあわせ、どのような歴史的特質を持つ時代だったのか、興味深い導入部から始まり、18世紀の音楽評論家や作曲家たちが記したバッハの評価の変遷を辿り、家族や弟子たちとの深い絆を今に伝える資料から“音楽の父”に迫りました。


サイエンスとバッハがどのように絡むのか、気になる人も多いと思います。サイエンスカフェというのは、自然科学分野のお話に限らず、科学的思考を深める場でもあります。みずみずしい感性を育む音楽に科学的な探究心を持ちあわせることで、一層輝きを増すものがあるようです。


オルガンの名手から、ついにはドレスデン宮廷作曲家に任命されたバッハは、音楽家として大成したわけですが、忘れてはいけないのが、弟子の存在。多くの弟子を持ち、弟子たちから敬慕されたということは、今で言うところの人材の育成に努めたということ。今でも人材の育成は企業の存続をも左右する重要課題ですから、バッハの偉大さを改めて思い知らされます。良き音楽家で良き先生、さらに家庭を大切にした良き夫で良き父親でした。美しく装丁された家族の音楽帳が印象あざやか。音楽帳に家族が曲を書き加えていくなんて、温かいですね。


お話の所々にチェンバロの演奏があり、会場はなごやかな雰囲気に。優美な調べに引き寄せられてくる人もあり、盛況でした。


演奏曲目

♪イタリア趣味による協奏曲 BWV 第1楽章  チェンバロ独奏 飯田万里子

♪アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集から

  前奏曲 イ短調 BWV827  チェンバロ独奏 飯田万里子
  J.G.ハインリヒ作 アリア タバコ・パイプ BWV515 チェンバロ独奏 飯田万里子

                                 バリトン 林 豊彦

  C.Ph.エマーヌエル・バッハ作 マーチBWV Anh.122 チェンバロ独奏 飯田万里子

♪シンフォニア 第2番 ハ短調 BWV788 チェンバロ独奏 飯田万里子

♪フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032(アルト・リコーダー版ト長調)

  第2楽章   リコーダー 林 豊彦

          チェンバロ 飯田万里子


こんなにたくさん!贅沢ですねぇ。


最後は ドイツが誇る古楽オーケストラ、フライブルク・バロック・オーケストの演奏で、ブランデンブルグ協奏曲 第5番のDVDを大きな画面で楽しみました。チェンバロのソロパートがあり、画面の前にもチェンバロがあるという、贅沢につぐ贅沢!


時間の都合で、予定されていたお話の一部は来年に持ち越しになりました。

生演奏もありましたから、あっという間の1時間半。それでも、漠然としていた“音楽の父”の輪郭が少し見えてきたのではないでしょうか。



ところで、12月23日(金・祝)に、同じ会場、ジュンク堂書店新潟店 地下1階で、古楽アンサンブル「楽路歴程(がくろれきてい)」の演奏があるそうです。時間は、12/13/14/15/16時から各40分。5回公演!入場自由で おなじみのクリスマスソングから、いにしえのキャロルやバロックも、何がでるかはお楽しみとのこと。チェンバロ2台にガンバ、リコーダー、歌もあり、豪華絢爛ですよ。

12月23日は、ジュンク堂書店新潟店で古楽にふれてはいかがでしょう。


サイエンスカフェにいがたhttp://www.ecosci.jp/n-cafe/