チョコレート工場の秘密    Charlie and the Chocolate Factory     評論社
ロアルド・ダール Roald Dahl


貧しい少年チャーリーはチョコレートが大好きですが、滅多にチョコレートを食べる機会がありません。誕生日にもらった一枚の板チョコを一ヶ月以上もたせるほどの生活を送っています。

 町には有名なウィリー・ワンカさんのチョコレート工場がありました。しかし、その工場で働く従業員の姿をここ久しく誰も見たことがありませんでした。というのもワンカさんは、昔スパイに製法を盗み出されたため従業員をすべてお払い箱にしてしまったからでした。それでも、チョコレート工場は再び動き出して世界一美味しいチョコレートを作りだしています。

 そんなある日、ウィリー・ワンカさんが、5人の子供を自分のチョコレート工場に招待する企画を打ち出します。ワンカのチョコレートの中に入っている金色の券を当てた子供が招待されるのです。さあ、大変。世界中の人々がこの金色の券を求めて必死になります。チャーリーも誕生日にもらったチョコレートに夢をかけますが・・・。


 食べ物がいっぱいの楽しくて美味しそうなファンタジーです。でもちょっと、いやいやすごくシュール。

 チャーリーの家の貧しさがまた凄くて、一台のベッドに4人の老人が寝ています!食べているのはキャベツのスープだけ。骨と皮になったチャーリー少年は、ひたすら体力を使わない方法を模索しています。金色の券を当てていくのは、わがままだったり、大食だったりとおばあさん曰く「いやな子供」です。それに引き替えチャーリーは貧しさに耐えるけなげな少年です。しかしそのチャーリーが券を引き当てたのは、拾ったお金で買ったチョコレートで、それを引き当てて大騒ぎのお話が続いて、お金の出所を誰も追求しないのがおかしい(笑)。モラルをすっかり無視した児童文学なのでした(但し、非難しているわけではありません)。
 

 チョコレート工場で働いているウンパ・ルンパたちは、いくらカカオ豆が好きとは言っても、箱に詰められて(!)やってきた、とか、教育的見地から見れば、眉をしかめるような部分が沢山あるのですが、ロアルド・ダール作品の弾けた面白さは、圧倒的に子供たちから支持を受けているようです。この作品を読むと納得。工場を流れるチョコレートの川や、トマトスープやローストビーフ味のチューインガムや、どんなに舐めても絶対小さくならないキャンディなど、抱腹絶倒アイデアのオンパレードです。


 ロアルド・ダールが何故お菓子にこだわるのか、また何故大人達を揶揄する話が多いのかは、彼の自伝「少年」を読むと納得できます。

 少年時代を厳しい寄宿学校で過ごした彼は、教師達の横暴を間の当たりに見てきたのでした。彼の級友をもっとも苦しみを長引かせる方法で辱めた校長は、彼から見れば人間的に最低の人物なのにカンタベリー大司教まで上り詰めたというエピソードはその局地。またお菓子については、あるチョコレートメーカーが生徒達全員にチョコレートを幾種類か配り、試食してもらってその感想を集めていて、それが大変楽しみだったという話は、この体験故に「チョコレート工場」が生まれたのね、と大いに納得。とにかく、「少年」を読んで、弾けまくるロアルド・ダールがちょっと身近に感じられるようになりました。


 ご存じの方も多いでしょうが、彼は女優パトリシア・ニールの夫でもありました。愛するリッシーへ、などと時々扉に書いてあったりします。子供みたいな性格の夫だっただけに、パトリシアさんも苦労したでしょう。



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