笑福亭鶴瓶(58)が10日、伊豆七島の式根島で、吹き替えで出演した米アニメ映画「怪盗グルーの月泥棒 3D」(29日公開)のジャパンプレミアを行った。島民約570人のうち、半分の230人が訪れ、初めて見る3D作品に大興奮だった。東京都新島村に属す同島では以前、集会所で8ミリ映画の上映を行ったことはあるが、本格的な映画上映は初めて。

 プレミア会場は式根島中学校体育館。暗幕を張って映画館に仕立てた。天候が荒れ飛行機が飛ばず、急きょ高速船で島に向かうハプニングはあったが、上映が終わると、鶴瓶が無事に登場した。「良かったやろ? どうしても島でやりたかったんです!」と言うと、大きな拍手が起こった。鶴瓶は同作の3Dをロサンゼルスで見て受けた衝撃を、近くに映画館がない人々に味わってもらおうと、今回のイベントを企画した。

 最初のあいさつが終わると鶴瓶は「おれがみんなに質問するわ」と、次々に感想、家族や友人のこと、結婚のなれそめまで聞いて一気に島民との距離を縮めた。観客の中に入り込み、3D作品さながらの、触れられる近さでの鶴瓶ワールド全開だった。鶴瓶は「これだけ集まってもらってめちゃめちゃうれしい。都会でイベントやるより、離島から発信もいい。本当に来られてよかった」。今後、島でのイベントオファーがあれば? と聞くと「来ます!!」と即答した。

 式根島で生まれ育った女性(64)は「こんなふうに映画を見たのは五十何年前、中村錦之助の時代劇以来。今日は本当にうれしかった」、島民代表で手紙を読んだ土肥七海さん(11)は「夏休みに東京で映画を見たことはあるけど、まさかここで3Dを見られるなんて」と話した。隣の新島から家族で訪れた人もいた。「世界一小さなプレミアイベント」と銘打った上映会は、島民にとって忘れられないものになった。【小林千穂】