【マフィア企画】ああ喧しいのに、口を閉じさせる事も儘ならくて【夏電戦応援】 | あたしの海にさよならを

あたしの海にさよならを

あなたはあたしのすべてだったの。 だからさようなら。 さよなら、あたしの海。




とある豪奢な作りの建造物、その一室でパイプ煙草を嗜みながら自分の愛杖を弄る老紳士風の男性がひとり。右隣には腰巻きと長く伸ばした髪が印象的な隻眼の男性が控えており、左隣には美しい顔立ちながら体格の良い男性がどっしりと構えていた。場所はRe dei Cani本部、サウル=ベンヴェヌート=インノチェンティの執務室である。とても静かで空気が重い。老紳士がひとこと、「暇ですね」と話しかけるが、どちらも自分宛と思わなかったのだろう、沈黙を続けた。サウル老はくすりと笑い、つまらないなあと漏らす。

「もっと楽しいことはないかな、どちらか存じないかね」

にこにこと、好々爺といった風貌で問いかける。では僭越ながら、と隻眼の男、アンディ=タラスが口を開いた。内容は簡単、何故BBを取り逃したのか、何故RCの失態が外部に漏れたのか、何故幹部のダビデ=O=インノチェンティがボスにさえ無断で外出を図ったのか。その3点であった。要約されていて解り易いと老人は笑う。頭を下げ肩を揺らしてくつくつと笑う様は、老紳士と呼ぶよりは老獪と表現する方が正しいであろう、ぱつりと分けた髪の一房がはらりと落ち、その老人の異質さを一層引き立てる。くつくつ、とひとしきり笑った所で老人が一言。

「当ててごらんなさい、暇をしていたのだし、少し遊戯(ゲエム)をしないかね。」

アンディも、巨躯の男性――ロキシス=アイスラーも、少しだけ眉を顰めた。いつもこの男は「ゲエム」をしたがる。何に関してもゲエムになる。人が死んだと聞いたら「どんな死に方をしたのか当てるゲエム」、組織を殲滅したと聞いたら「何時間で殲滅したか当てるゲエム」、オメルタ破りが発覚したら「どうして発覚したか当てるゲエム」、オメルタ破りを捕えたと聞いたら「拷問に何時間まで耐えられるか当てるゲエム」。この男の本質は、人の命が弄ばれる事自体を楽しむ男なのだ。そして、その「ゲエム」は、人命が関与する事が多い。今回もそれなのだろう、気味の悪い翁である。その雰囲気を読み取ったのであろう、その爺はつまらないと呟き、「こたえあわせ」をした。

「答えは簡単、全て私が口を出した、それだけだよ。」

だろうな、といったような仕草をとるロキシスを見やり、おやと驚いたような表情を見せる。そして意地の悪い笑顔を浮かべ、何故解っていながら止めなかったのかを訊ねた。この爺は止めて言う事を聞くような男ではない。それで被害が拡大しようものならそれこそ「この男の遊戯」となるのである。そのことを口に出すのも面倒だったのか、頭を振る事で表現した。サウル老もそれを察したのだろう、くつくつと笑う。ああつまらない、と笑いながら繰り返す。

「恐れながら申し上げますが、これで被害が出てしまうとまた【駒拾い】の必要が出てきます」

アンディが言う。サウル老はふわりと紳士的な笑みを浮かべ、アンディの方を向く。サウル老ももう年齢が年齢だ、若かりし頃はそれなりの諜報員であったかも知れないが、現在はただのしわしわの爺である。元より怪我をして動かし辛かった足は既に歩くという行為にでさえ悲鳴を上げていたし、長時間の外出をする体力も然程なかった。そこを案じての発言だろう、アンディは視線を少し落として話していた。足を見ていた様子であった。だいじょうぶだよ、と嗄れた声で答える、くつくつと笑いながら。

「私とてそこまで老いてはいまい、…それに、代わりに捨て犬捨て猫を拾ってくれる【駒】がいるだろう?」

彼等の脳裏に浮かんだのはひとりの青年、金の長い髪を靡かせ、海色の瞳を煌めかせた、美しい「それ」。それも元は親に捨てられた男娼であったが、圧倒的暴力性と残虐性を持ち、果てには謀略により多くの組織内の人間を陥れ、その資質を買われて幹部にのし上がった男であった。「圧倒的暴力による統制」、Re dei Caniの体勢を体現したような男、それがダヴィド――現在の名は「ダビデ=オッタヴィアーノ=インノチェンティ」、件の無断出撃をした輩である。

「…今回の件でジュニアが【いなくなってしまった】場合は、いかがお考えでしょうか」

アンディが呟く。サウルは未だに笑っていた。その笑顔は引くような笑いではなく、やわらかく、あたたかい笑顔であった。紳士的、そう呼ぶに相応しい笑顔を彼等に向けていた。それはジュニア、つまりダビデに対する絶対的信頼の現れかと二人は安堵していた。次に飛び出す単語はその期待を裏切る言葉であったと、その時は誰も思わなかっただろう。

「何の為の【ダビデ付ソルジャー】なのかな?彼の後任を育成する為だろう?何の為に彼の傍にあれほど多くの人間をつけたと?代わりは多い方が安心だろう?何の為に私が【あれ】を可愛がってきたと?あれが生み出す子らを最後まで育てて、ちゃんと私に差し出して貰う為だろう?決まっているではないか。今更何を言っているのかな?」

高らかに笑う老獪。はじめからこの老獪はひとをひとと思っていなかったのだ。可愛がっていたその少年さえも、己の望むままに捨てようとしていた。それに、と付け足す。

「【あれ】には、もう飽いて了(しま)っていてね。寧ろこれで少し望みを失ってくれたほうが、私としても愉しいのだよ。」

まあ、君達には解らないかも知れないがね。そのひとことを言い放って暫く、優雅な仕草で、高らかに、その老害はひたすら笑った。

広く静かな部屋には、その声はとてもよく反響してやたらと喧しかった。




【観客席から眺める、そのまま崩れ落ちるさまを】





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ゲスっぷりがうまく表わせられませんでした。^q^←←←←←←←←
とりあえずBBがばらばらに散らばってしまったことも、RCの情報が漏れた事も、ぜんぶインノチェンティのせいです^q^インノチェンティが先に各組織に言いふらしてましたー!!っていうネタバラし←←←←
だってつまんなかったんだもん…///というのがインノチェンティの言い分です←←←←←


すみませんでした^q^wwwwwwww