すべての本の背後に物語がある。

今日、発売する『マップ式 中国語記憶術』は、Kさんの一言から生まれた。
「先生はよく漢字で単語を説明してくれますから、授業は楽しい」と。

たとえば、このKさんは、中国の宴会席で「真命天子」(本命の人)を習った。
それを会話で使ってみた。

「真命天子」と言えば、もともと「天命を受けている皇帝(天子)」のこと。
そして、天命が尽きて、王朝が倒されたことは、「革命」と言う。

もちろん、revolutionの訳語としての「革命」は和製漢語。
それは、日本から中国に輸出した言葉だ。


林 松涛のブログ



このような話は、Kさんにとっておもしろかったかもしれない。


じつは、中国語の授業とは別に、
私自身は、海を渡って、日中の間にある言葉の交流に興味がある。

同じ古典からの言葉、たとえば、人情、義理はどうして日中の間で違う意味になるのか。
そこから、どのような社会構成、歴史、コミュニケーションのギャップが読み取れるか。
などなど。

教室で、雑談ではなく、授業の形で、みなさんと話題を共有できたことは、
自分にとっても大変嬉しいことである。

それを可能にしてくれたのは、「漢字」である。

漢字はイメージである。
漢字には、歴史、哲学、美学、自然、生活とたくさんのメッセージが詰まっている。
漢字は、日本人と中国人の気持ちをつなげてくれる。
そして、漢字と漢字は、おもしろくつながっている。

このような話を、あるパーティーで辞書を編集している出版界の方に話した。
お二人の方から「ぜひ授業中の楽しい話を書いてください」とアドバイスをもらった。

自分も楽しいことばかり思い出して、ドーパミンを分泌しっぱなしの状態で、この本を書いた。

Kさんは「単語記憶術」というタイトルを知ったとき、
「すごい!記憶術か!」と笑ってしまった。

記憶術というのは、マップ式でもあるが、
いちばんのポイントは、楽しい思い出だと思う。

『マップ式 中国語記憶術』の背後に楽しい物語がいっぱいあった。



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