マイナス金利はなぜ導入されたか | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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マスコミではなぜかマイナス金利の悪い面ばかりが強調されているようです。



「マイナス金利のせいで株が下がった」などと言っているのはさすがに無知か嘘つきですが、もともと「新しいことをやるときは、とりあえず悪い面ばかりを報道する」という、日本独特の報道姿勢に従ったものです。報道にかぎらず、日本ではこれまでの秩序を壊すような新しいことをやると、たいていは徹底的に叩かれます(たとえば、堀江貴文さんはその例でしょう。ライブドアがオリンパスや東芝ほど悪いことをしたわけではないのに、堀江さんだけが逮捕され実刑を受けました)。



これからもしばらくはこういった否定的な報道が続くと思うので、ここでは、なぜマイナス金利が導入されて、またマイナス金利にどういった効果があるかを、なるべく客観的にまとめておきます。



今回、日銀が実施したマイナス金利は、銀行を中心とする金融機関が日銀に当座預金として預けているお金から利子をとることです。



「お金を預けたのに金利を取られるっておかしくない?」と思った方がいるでしょうが、前提として、当座預金はそもそも金利がつかない種類の預金です。面倒な手続きなしでお金を動かせるので便利だから当座預金が利用されるのであって、利子が付く普通預金とは違います(銀行は日常的に数百億円単位を動かしているので、それを現金で動かすのは現実として不可能です)。





ただ、リーマンショックで金融機関がおかしくなったことから、前の日銀総裁が、当座預金でも金利をつけるようにしました。このことで、銀行はゼロ金利なのに一般の人たちからたくさんの貯金を集められ、日銀に集めておくだけで差額を受け取れるようになりました。ゼロ金利なのにたくさん預金が集まったのは、当時の日銀の無策もあり、デフレで「物がどんどん安くなる」という状態なので、今使うのがばからしかったからです。



一昨年だったか、「日銀の当座預金残高が150兆円を突破」というニュースがあったと思います。銀行は150兆円ものお金を運用しないで、日銀に預けっぱなしにしているわけです。



これが銀行にとって「おいしい」のは、リスクを負わないで確実に利益あることです。企業にお金を貸す場合は、延滞リスク、倒産リスクがあります。回収できなければまるまる損します。貸し出しに限らず、リスクは小さければ小さいほど望ましいと多くの人が考えます。



金融危機のとき、この日銀の方策が銀行を助けました。貸したお金が不良債権になって銀行を苦しめたので、一定のお金がリスクゼロで入ってくるので、銀行にとってはたいへん大助かりでした。



ところが、アベノミクスが効果を発揮してくると、この方策がだんだん景気の足かせになります。と言うのは、本来、銀行は多くの会社や個人にお金を貸してそれを回収することで儲けるものなのに、そういったことをせずに済むからです。



着実にお金が入れば、銀行はリスクをもっととりたがらなくなります。本来の業務を怠るようになることは避けられません。とくに日本の銀行はリスクが大嫌いですから、わざわざ冒険しようなんて思うはずがありません。





安倍首相はもっと景気を上げるために企業に設備投資を求めますが、「ヨーロッパ経済危機」「中国経済の停滞」「石油価格の下落=資源国の財政危機」など、海外でも良くないことが続いています。また、日本国内も少子化で先々は経済成長なんて無理という人もいて、設備を新しくすることや、賃金を上げたりすることなど、前向きな投資をしたくない経営者ばかりです。



景気が上向いて銀行の経営が安定し始めた以上、黒田日銀総裁は銀行をもっと働かせたいと考えました。日銀には150兆円ものお金が使われずにそのままになっているので、このうちの何分の1かでも使われるようになれば、経済には大きなプラスです。



そこで、導入されたのが今回のマイナス金利です。これまで貯めているお金はとりあえずそのまま金利がつくことにしておいて、銀行がこれから日銀に預けるお金については金利をとりはじめました。無理なくバランスがとれたやり方だと思います。



マイナス金利は1970年代にスイスで導入されたことがあり、現在もスイスやEUで導入しています。ヨーロッパではマイナス金利の導入で住宅ローンの金利が下がって、家を買おうという人が以前よりだいぶ増えています。



でも、日銀はマイナス金利を導入しないだろうと多くの人が思いました。それは、日本がかなり成熟した社会なので、金利が低いながらも安全な金融商品で運用している金融機関や企業や団体がたくさんあるからです。



黒田日銀総裁はあえてマイナス金利を導入しました。それは「誰もマイナス金利なんて導入しない」と思っているからこそ、やればみんなが驚き、あわてて株や債券や不動産を買いに走る人がどんどん出てきて、それにつられて他の人も買いに入る可能性があるからです。





さて、マイナス金利の目的ですが、ようは「ゼロ金利で集めたお金を貯めたままにしておけばいい」という銀行に喝を入れるためです。



「これから日銀に預けるお金には金利を取られる」と思えば、銀行はもっと有利なところにお金を回そうとします。たとえば、担保が確実に取れる住宅ローンや、安定した企業への貸しつけなどです。銀行員たちはそういったところになんとか借りてもらおうと、金利を下げて、ついでに頭も下げます。



つまり、本来の銀行業務を推進するようになるわけです。



優良な借り手は100円借りれば100円と利子を払ってくれるので、銀行は確実に儲けが出ます。でも、すでに優良な借り手にはじゅうぶんお金が回れば、次に「ちょっと不安だけでまあ大丈夫だろう」というレベルの人たちにも貸さざるをえません。



たとえば100円貸してそのうち2円だけ回収できなくても、98円と利子分で101円回収できれば、銀行は1円も儲けが出ます。だから、3%の利子が取れるなら2%のリスクならかぶろうと考えます(わかりにくくなるので、年限やインフレ率は考慮していません)。



ただ、銀行も商売ですから、できるだけ安定しているか見こみのある会社に貸したいと思います。たとえば、根強い固定客がいるブランド企業や老舗商店、その会社しかないオンリーワン企業、伸びそうな新興会社などです。とくに新興企業は当たると伸び方の桁が違うので、有望な企業への貸し付けは日本経済全体の拡大にも大きな効果があります。



これから大事なのは、政府や公共団体がこういった動きをサポートすることです。たとえば、規制があるために新しいことができないのであれば、即座に規制を撤廃する。世界的に有望な市場ができそうならその分野にたくさん支出する。面白い研究をしている会社や大学や研究者に支援金を出す。などといったことです。



ところで、マイナス金利には悪い面もありますが、反安倍政権ばかりの日本のメディアがたくさん述べているので省略します。いちおう触れるだけ触れておくと、預金している人がもらえる金利が減ること、安全な金融商品や割の良い保険が減ること、そして何と言っても、年金機構・銀行・生保など運用で食べているところが、リスクを負わなくてはならなくなることです(もちろん、それらは見方によっては良い面にもなります)。



そういった悪い面を考慮しても、マイナス金利は今の日本経済には良い面が大きく、長い目で見ればだんだんとプラスに効いてくると考えられます。私たちはマスコミの報道を鵜呑みにしないで、この状況で何をすれば損をしないのか、得をするのかを冷静に考えて行動すればいいのです。やらなくて済んだのがむしろ珍しかったのであって、これから正常化すると考えてもいいかもしれせん。



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