(本の紹介)『基本からわかる英語リーディング教本』(薬袋善郎著) | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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「最近はどんな英語の参考書が売れているのだろう」とAmazonを調べていたら、2000年に出た上記の『基本からわかる英語リーディング教本』(研究社、以下、『英語リーディング教本』)が全体の8位に入っていました。


何があったのだろうとネットを当たっていたら、「急がばまわれ式・堅実で一番効率的な英語の勉強法」(リンク)というタイトルで、はてなブックマークを中心にネットで話題になったことで火がついたことがわかりました。


もともと評価の高い本ですが、こうやって何度も話題になるところを見ると、英語学習の根本に関わる何かを持った参考書なのだろうと思います。


以下この本について書きますが、その説明の中で「英語構文」という用語を使います。英語構文とは、英文の構造を分析すること、くらいに考えてください。



足跡 足跡 足跡



大学受験を前提とした英語学習にはいくつかの流れがありますが、読解だけにしぼると、次の2つが大きなものだ思います。



1.オーソドックスな文法を中心とした学校英語

2.約10カ月で大幅な読解力をつけることを目指した予備校英語



1についてはまた論じますが、とりあえずある水準の読み書きの能力が必要だという社会人の方には2のほうが向いているでしょう。なぜなら、約10カ月という短期間で多くの人が大人向けの文章が読めるようにすることを目指した方法だからです。


ただし、2に統一された考え方があるわけではありません。学校文法寄りものから、予備校でしか学べないものまで、まさに「何でもあり」で混沌としてます。


しかし、そんな中にも大きな流れというものがあります。代表的なのは次の2つの方法です。



A.英語を英語の順番で読むための訓練をする。

B.あくまで日本語の立場から英語を分析する。



大部分の塾で教えられているのは1と2をミックスしたようなやり方ですが、大手予備校などで教えられているのは、AとBを2つをミックスしたようなやり方が中心です。



最終的なゴールの高さを考えればAのほうがすぐれており、実際、身につけられれば力がかなりつきます。この方法で成功を収めたのが90年くらいまでの駿台予備校です。



ただ、Aを身につけるにはかなりの訓練が必要です。また、どうしても説明できない部分があらわれ「身についた」という実感が得られない部分も多く、それが挫折の原因にもなりがちです。



代表的な参考書は故伊藤和夫先生の『ビジュアル英文解釈』(駿台文庫)です(この本については別の機会に論じたいと思います)。



日本人であればBはAよりはるかに学びやすく、「納得」が得やすい方法です。この代表的な参考書が『英語リーディング教本』です。



『英語リーディング教本』の特徴は、英語構文を徹底的におこなっている点にあります。



戦前からある勉強法に、英文を単語に分けて、それぞれに品詞を当てはめていくものがあります。この方法は「品詞分解」と呼ばれています。古典の勉強でやった方もいらっしゃでしょう。



『英語リーディング教本』は、この品詞分解を洗練させた方法論をとっていると言っていいでしょう。



どこが洗練されているか。たんに品詞分解するのではなく、それぞれの単語の修飾関係と動詞のはたらきを記号で区別している点です。これは英語構文を学ぶうえで画期的なアイデアでした。



「英語を英語の順番で読めるようになる」という点にこだわらず、とにかく目の前にある英文の構造をビジュアル化できるようになることを目指している点は、ほかにはないユニークさを持っています。



『英語リーディング教本』でユニークなもう1つは、構造分析を瞬時にできるようになるために、そのための口頭訓練をさせている点です。まるで、寺子屋で口移しで繰り返させるかのような教え方をしています。いわば、「英語構文の筋トレ」をやらせる本と言っていいかもしれません。



その結果、かなりの部分(決して全部ではありません)の英文が構造がわかるようになります。



英語は英語の順番で読ませるのがベストだというのが私の立場ですが、それができないのであれば、『英語リーディング教本』のやり方もまた1つの方法だとかんじます。



ただし、それにともなう短所もあります。



まず、英文のすべてがこの方法で分析できるわけではない点です。



動詞のはたらきがよくわからない、修飾関係があいまいな英文は、学校の教科書や大学受験を離れればいくらでも出てきます。そんなときにどうするのか? 本書のやり方では、ことばにはありがちなあいまいな構造をとるといった「余白のある考え方」が作りづらい面があります。



もう1つは、英文の構造にこだわり過ぎている点です。それがなぜ短所になるかというと、英語を読むためには「意味に対する意識」と「構造に対する意識」の両方が必要だからです。



人間の集中力というものは限られているので、「構造に対する意識」をできるだけ小さくしたほうがいいのは当然です。「意味に対する意識」は大きければ大きいほどよく、実際、ネイティブスピーカーは大部分の英語を意味だけを意識して読んでいるはずです。



そのため、Bの方法であると、Aより日本語を使わなくても英語の意味がとれるようになる時期、いわば読解能力の「飛躍の時期」が遅れてしまうことが予想できます。



そういった短所を考慮しても、これまで読解の本に挫折した人は『英語リーディング教本』で「急がばまわれ」でやるのは有効な方法だと考えられます。文法が好きな学習者、とくに理系の人には向いているのではないかという気がします。



最近はとくに学校で文法をやらなくなっているので、『英語リーディング教本』がますます輝きを増しているのでしょう。



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英語リーディング教本―基本からわかる
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