コトノハ つづれ織 〜1〜 | 魂のよろこぶ生きかた

魂のよろこぶ生きかた

 やはぎのりか 矢作 典加 

ある時、昼休みに国語の教科書の話になり
彼女はスーホの白い馬の話をして
わたしは、ぼろぼろな駝鳥の話をした。
私の頭はどんどん忘れていくけれど
ぼろぼろな駝鳥の記憶は今でも鮮明だ。
悲しい目をした駝鳥が脳裏にうかんだ。

人間はなんて馬鹿なことをするんだろう。

そう思った最初だったんだ。


そんな風に思う子供だったんだね。
今は、そんな風に思う質をもった子供だったんだ
と、私のことを受けとめている。



高村光太郎 

ぼろぼろな駝鳥

何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半のぬかるみの中では、
脚が大股過ぎるぢやないか。
頸があんまり長過ぎるぢやないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢやないか。
腹がへるから堅パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかり見てゐるぢやないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢやないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢやないか。
あの小さな素朴な頭が無辺代の夢で逆まいてゐるぢやないか。
これはもう駝鳥ぢやないぢやないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。