自分の仕事と部下へのコーチングを両立させる | ごく普通の日本人が出逢った外資系企業の世界

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来年1月から、部下のフィリピン人が昇進して中国へと異動になります。

彼にとって、中国で働くのは初めてで、仕事の内容もこれまでとはまったく異なり、さらに初めての部下をいきなり5人持つことになります。

当然まわりは彼のことを知らないわけで、彼自身が結果を出してクレディビリティを得ないといけません。

同時に、部下を育て、チームとしても結果を出すことも求められています。

この二つをどうやって両立させたらよいのか悩んでいたので、私のこれまでの経験とやり方について話をしました。


心がけていることがいくつかあります。


1) まずは、部下との時間を必要十分に、規律を持って確保すること。


この「規律」というのはとても大切で、部下が思いついたときにいつでも無制限に話ができるようにしてしまうと、いくら時間があっても足りません。


一週間に一度、1時間くらいの時間を個別に確保し、それとは別に1時間のチームミーティングの時間を設けます。


この「個別の時間」では、「仕事の進捗の確認と必要な指示・コーティング」、「評価基準と現在のステイタス」、「強み・弱みとそれに対するトレーニングプラン」、「現在の仕事が将来のキャリアにどうつながっていくのかに関するキャリアガイダンス」などについて話をします。個人・マネージャー双方で何が話したいかを事前に考えておき、その時間内で話した内容・合意内容などをメールでまとめてお互いにシェアし、翌週の時間にはそのフォローアップから話をスタートさせます。もちろん、緊急性の高い内容に関してはその1時間以外にも時間をとるべきですが、定期的な時間を確保すること、きちんとサマリーを文書化して次に繋げていくこと、などを規律をもってやっていくと、驚くほど効率・効果ともに上がります。


それとは別にチームの時間を設け、共通の確認事項、お互いの優先順位のシェアリング、よい事例のリアプリケーションなどを行って、チームとしての方向性をひとつにし、メンバー間のシナジーも高めていきます。


私は以前、2年間ほど30人の部下を持っていたことがあります。それまでは、自分の仕事と部下への時間の両立も、力技で何とかなっていました。しかし、部下がこれほど増えてしまうと、そうはいきません。さすがに週一で個別に時間を確保することはできませんでしたが、最低月一回の時間を設けることで、何とか対処することができました。それ以来、この習慣を続けています。


この「個別の時間」に関して、もうひとつ大切なことは、「必要十分」ということです。

そして、この度合いは、各個人によって変わってくることを理解することが大切だと思います。


少し話がそれますが、卓越したリーダーシップというのは、生まれつき得られるものではありません。なぜなら、リーダーシップにはいろんなスタイルがあって、状況に応じて効果的なリーダーシップのスタイルが異なるからです。卓越したリーダーというのは、いろんなリーダーシップのスタイルを学んで身につけ、状況に応じて効果的使い分けています。


これは部下へのコーチングに関しても同様です。


気をつけているポイントは二つ。


ひとつは、各個人の仕事における習熟度合いです。

新入社員や、その仕事についてまだ日が浅い人に対しては、コーチングというよりティーチングに近いやり方で接します。つまり、「方向性や期待している結果」に加え、「そこにたどり着くためのやり方」を指導するということです。これは、結果は出しやすいですが、その個人の成長という意味では、常に最適とは言えません。

あるい程度の習熟度合いと能力が確認されたら、コーチングへとシフトしていきます。結果を出すという意味ではある程度リスクをとることになりますが、個人の成長を大きく加速させられる可能性があります。


もうひとつは、各個人が何に対してモチベーションを感じるかということです。

以前にも私の経験として述べましたが 、ある人は将来の目標やキャリアアップにつながっているということがモチベーションの源泉になります。ある人は自分がやっていることが自分の価値観にあっていて、それ自身を楽しい、あるいは有意義だと感じることがモチベーションとなります。各個人としっかり話をして、それぞれが何に対してモチベーションを感じるのかを理解することが大切です。それによって、仕事の割り振りや、コーチングの仕方も変わってきます。


仕事の習熟度合いと、モチベーションの源泉。主にこの二つを軸にして、コーチングのスタイルを調整するように心がけています。


ここまで、「自分の仕事と部下へのコーチングを両立させる」方法のひとつとして、「部下との時間を必要十分に、規律を持って確保する」ことについて書いてきました。ここからは、私がもうひとつ心がけていることについて書いてみたいと思います。


2) それは、「自分の手を動かす仕事を確保する」ということです。


英語では、「get your hands dirty」という言葉があります。

これは、「自分の手を汚して働く」という意味です。

つまり、部下に指示を出して自分自身は大所高所に留まるのではなく、自分自身も前線に立って、数字にまみれたり、自分の手を動かして仕事をするということです。


もちろん、そうすることによって、チームに一体感が出て、「口先だけではないマネージャー」というエクイティを得ることができるのですが、効果はそれだけではありません。


自分のチームが持っているブランド、地域、お得意先様の中で、小さくてもいいのでどれかひとつを自分で担当し、ベスト・イン・クラスのやり方をそこで体現します。

そうすることによって、自分の部下たちがプラクティカル(実践的)にリアプリケーションできる方法を示すことができますし、部下たちがやっている仕事を表面的ではなく深く理解することができます。当然、与えることのできるコーチングの質も高まっていきます。


ここで気をつけないといけないのは、どれを自分が手を汚すエリアとして選ぶかです。

あまりに大きいと、自分の時間の大半を費やしてしまうことにもなりかねません。

また、ほかのエリアに対してユニークなものを選んでしまうと、部下がリアプリケーションできなくなってしまいます。


適度なサイズの、典型的なひとつを選んで、そこで最高のやり方を実践する。

そうすることで、チームとしてより高い質の結果に向かうことをドライブできますし、そのやり方を示すこと自体が、部下に対するコーチングとなります。


「部下との時間を必要十分に、規律を持って確保する」ことと、「自分の手を動かす仕事を確保する」こと。

この2つを、これから中国へマネージャーとして赴任していく部下に伝えました。


よい便りを期待したいと思います。




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