偽りの王子 カーシア国三部作 / ジェニファー・A・ニールセン / 橋本恵訳 / ほるぷ出版

王と王妃と王子の突然死に国が揺れ、内戦の気配が高まるカーシア国。
孤児院の問題児セージは、ある日貴族の男コナーに買われ、彼の館に連れて行かれます。
コナーの館に集められたのは、セージを含む3人の孤児。コナーの計画は、そのうちのひとりを行方不明の王子の偽物を仕立てあげて、この国の権力を握ること。

王子に選ばれるのははたして、賢いトビアス、強いローデン、そして問題児セージのいったい誰なのか?
逃げても、また王子に選ばれなくても、彼らには口封じが待っています。


悪の貴族と王子候補の孤児3人の、「王子」お披露目までの2週間を描くスリリングな物語。
アメリカでベストセラーになっている、児童書ファンタジー3部作の1作目です。
パラマウントにより映画化の予定あり。


…というだけあって、とても映画っぽい印象の本です。
主人公セージが生肉抱えて逃げ回ってる話の冒頭から、読みはじめてすぐ映像が浮かぶ感じ。
すごい速さで走るセージの足に、街の人々の表情、追っかけてくる肉屋のおじさん――と、カット割りまで浮かびます。流れる音楽のイメージまで浮かんだよ(笑・ちなみにダニー・エルフマンっぽい感じ)。


物語もテンポが良く、ほとんど館の中だけで進行する話だというのに、悪の貴族コナーの陰謀がどうなるか、王子候補の誰が勝つのかというサスペンスでぐいぐい引っぱってくれるし、ほどよいサプライズも準備してくれてるしで、全然飽きさせません。
ハリウッドの娯楽映画みたいに、最後までスムーズに読者をのせてってくれて、しっかり楽しませてくれます。

まあ「あの秘密」についてはわりと早い段階で見当がつくのですが(「彼」が怪しい行動しすぎなので…)、見当ついちゃってても十分楽しいと思います。


優等生キャラ、ガキ大将タイプ、問題児とはっきりカラーの違う3人の偽王子候補の争いや、彼らの関係の移り変わりも面白いところ。おお、結局彼と敵対して、彼は味方になったのね。この辺の関係は2巻目以降でもっと面白い展開になっていくかもしれません。

主人公のセージは、純粋で優しく元気な孤児…というよくあるキャラではなく、生意気で頭が切れて行動が読めず、なかなかクールでかっこいいです。メーガン・ウェレイン・ターナーの「盗神伝」の主人公ジェンに近い感じかな。

また召使いのイモジェンとお姫様のアミランダという女子2人もどちらも気が強くて魅力的。2人ともセージとはまだロマンス未満という感じですが、今後はどうなっていくのかな?


なお、異世界が舞台なので一応ブログテーマは「ブックレビュー:ファンタジー」に入れましたが、いまのところファンタジー要素は全然なくて、架空の国のお家騒動物語という趣です。

偽りの王子 (カーシア国三部作)/ジェニファー・A・ニールセン

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