コリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトなど)の副作用 | 老年科医の独り言

老年科医の独り言

認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

アリセプト・レミニール・イクセロンパッチなどのコリンエステラーゼ阻害薬の副作用について、世界的な集約が発表された。

アルツハイマーが非常に多い欧米でのデータが中心と考えられる。

アルツハイマー以外の原因が、はるかに多い日本では、この数字以上の副作用が出ていると思われる

 

アルツハイマー病(AD)に対してコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が臨床使用できるようになって以来、AD患者におけるChEIの副作用スペクトラムを評価する世界的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)研究は実施されていない。カナダ・ラバル大学のEdeltraut Kroger氏らは、WHO国際医薬品モニタリングプログラムのデータベース(VigiBase)を用い、16年にわたるADにおけるChEI関連副作用を分析した。その結果、精神神経系障害の副作用が最も多いこと、心血管系障害の副作用の重要性が過小評価されていた可能性があることなどを示した。結果を踏まえ、著者らは「患者のフレイルや高頻度の併用薬使用によっては、ChEIの投与を開始する前に副作用について注意が必要である」とまとめている。Annals of Pharmacotherapy201511月号(オンライン版2015831日号)掲載報告。

 

  研究グループは、1998年~2013年の間に5大陸からVigiBaseへ報告されたすべてのChEI(ドネペジル、リバスチミン、ガランタミン)関連副作用を抽出し、全般的な副作用、重篤な副作用、重篤でない副作用に関して分析した。

 

  主な結果は以下のとおり。

 

58ヵ国から合計18,955件(副作用件数43,753件)の報告があった(女性60.1%、平均年齢77.4±9.1歳)。

・欧州(47.6%)と北米(40.4%)からの報告が多くを占めた。

・ほとんどの報告に、リバスチグミンとドネペジルが含まれていた(それぞれ41.4%)。

・副作用は精神神経系障害(31.4%)が最も多く、胃腸障害(15.9%)、全身障害(11.9%)、心血管障害(11.7%)が続いた。

200613年の報告は、重篤でない副作用よりも重篤な副作用が多かった。重篤な副作用は精神神経系障害(34.0%)が最も多く、全身障害(14.0%)、心血管系障害(12.1%)、胃腸障害(11.6%)であった。

・投薬過誤は重症例の2.0%で報告された。

・死亡例は全体の2.3%であった。

 

この数字が大きいか無視できるか?

医師の良心が問われる。

レビーが非常に多い日本では、リスクが大きすぎ!

私は、前医から引き続きコリンエステラーゼ阻害薬を続けることは有るが、結局中止する事に成るケースが大半である。

止めて精神症状が良く成るケースは多いが、悪化するケースはほとんどない。皆無と言っても良いくらいである。

 

最近厚労省が、抗認知症薬の増量規定を廃止した。

今まで「メーカーが自主的にやってもらうしかない」とコメントするだけだった厚労省に何が起こったのか?

副作用の問題しか考えられない。死に至る可能性がある有害事象が有る事は、間違いない。私も2例報告している。

ある通信社で取材を受け、この副作用について告げた。この記者に厚労省で確認してみる様要請したのだが、これが効いたとは言わないまでも、ここで提示した論文など有害事象が大きい事が、増量規定を撤廃した大きな理由であろう。