15歳の猫の皮膚に2年前より存在した小腫瘤が急速増大したため、細胞診を行い皮膚肥満細胞腫と診断した。

血液検査、画像検査では異常は認められず、腫瘤の底部筋膜を含めた拡大切除を行った。

病理組織検査の結果は高分化型の肥満細胞腫であり、切除マージンにも腫瘍細胞は認められなかった。


その後、再発も認められず非常に元気に過ごしていたが、術後7カ月目に元気・食欲消失で来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-肥満細胞血症

血液検査では非再生性の貧血が認められ、末梢血中に肥満細胞を散見し肥満細胞血症を発現していた。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-脾腫
また、腹部超音波検査では腫大した脾臓を確認し、脾臓型の肥満細胞腫の発症が疑われた。


一般に腹腔内に発生する肥満細胞腫は予後が悪いが、脾臓型肥満細胞腫の場合は肥満細胞血症を発現していても脾臓摘出により比較的長期のQOLの改善が認められることが多い。


残念ながらこの症例はオーナーの了解が得られず、その後急速に全身状態が悪化して亡くなった。


このような全身性の肥満細胞腫の治療に新たな可能性が開かれつつある。

近年、犬の肥満細胞腫において遺伝子治療薬の利用が注目されている。

グリベック(メシル酸イマチニブ)という薬は従来の抗がん剤と違い、がんの原因分子に選択的に作用する分子標的薬である。選択的に作用するために、従来の抗がん剤に比べて格段に副作用が少なく効果的である。

c-kit遺伝子の変異が認められる肥満細胞腫ではグリベックが効果的である。

最近になり猫での報告も出始めており、期待されている。