腹腔内腫瘤はしばしば巨大に成長して発見されます。

それは、お腹の中にあるので外見上分かりにくく、大きくなるまでほとんど症状を示さないことが多いためです。

やがて、巨大に成長して周囲の他臓器を圧迫し始めると症状が現れ始めます。

お腹が膨れてきて動きが鈍くなったり、腸の圧迫により便が出にくくなったりしますが、多くの飼い主は「最近太って動きが悪くなった」とか「年を取っておとなしくなった」のだと見過ごしてしまうことが多いようです。

また、大きくなった腫瘤の表面はもろく、破裂を起こして突然の出血死をすることもあります。

お腹の中に大きな爆弾を抱えたような状態であり、どうにかしてこの爆弾を処理しなければ命が危ないのです。


腹腔内巨大腫瘤

ここで重要なのは、この巨大腫瘤が「がん」なのかではなく、手術で取れそうなのか見積もりを立てることです。

腫瘤の大きさと内部構造、存在部位、周囲組織との関係(癒着の有無)などを触診や各種画像診断にてチェックします。

また、悪性腫瘍であることも想定し、転移所見の有無や癌性腹膜炎など手術をしても無駄な所見がないかチェックします。

そして、患者の健康状態は手術に耐えられる状態かチェックして、すべてクリアーしたら手術の準備に入るのです。


病院では不測の事態を予測して手術器具や設備、手術チームとなるスタッフを万全に準備します。

患者とそのオーナーは手術までの期間、お腹をぶつけたりしないようにおとなしく過ごします。


無事に手術が済んだら、切除した腫瘤の病理組織検査の結果を待ちます。

良性腫瘍だったら、これで完治するでしょう。

もし、悪性腫瘍だったら、再発や転移を防ぐために術後の補助的化学療法など、治療の作戦を立てる必要があるでしょう。