ディスカバリー(とベンダー)(余談)~制裁と保険 | 日々、リーガルプラクティス。

日々、リーガルプラクティス。

企業法務、英文契約、アメリカ法の勉強を
中心として徒然なるままに綴る企業法務ブログです。
週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。

ディスカバリーベンダーは関係しないのですが、前回の投稿に関連して、ふと疑問に思ったことを。

今回の武田薬品工業のMDLのような製造物責任訴訟において、原告側が因果関係の立証をできていないところ、被告側のディスカバリー義務違反によってAdverse Inference Jury Instruction(前回のエントリーで説明しました)がなされて、それにより陪審員が因果関係を推定して当該製造物によって原告の損害が発生した、と評決し、それを裁判官が支持した場合、この裁判とは離れたところで、被告が付保している製造物責任保険による保険金の支払いは果たしてあるのでしょうか?

アメリカの場合、Product Liabilityに関する保険というとCommercial General Liability Insurance、つまりCGL保険にてカバーするのが一般的だという認識なのですが、例えば米国のCGL保険の多くのモデルとなっているISO(Insurance Service Office)が提供するCOMMERCIAL GENERAL LIABILITY COVERAGE FORMのモデル*1では保険金支払い義務の原則をこのように定めています。


We will pay those sums that the insured becomes legally obligated to pay as damages because of "bodily injury" or "property damage" to which this insurance applies.



うーん、なかなか微妙な判断となりそうな気が。。。

因果関係について、保険約款の定めを仮にクリアしたとしても、今度は逆にKnown Loss(事故の偶発性)の問題も出てきますよね。つまり「損害が起きるのを知ってて保険に入っただろ。だから保険金は支払えない。」みたいな。だいぶ前にLitigation Holdを出していたことなどから、こういうことも言ってくる可能性もあるかと。しかし、PL保険みたいに第三者に対する損害をカバーする保険(Third-Party Liability Insurance)の場合は、事故が偶発的ではなく被保険者は事故が生じるのを知っていた(=Known Loss)、ということについては保険会社側にその立証責任の負担があるはずなので*2、これもまた色々と難しいところもある気もします。

上記をふと思ったので、備忘録として残しておきます。


*1 COMMERCIAL GENERAL LIABILITY CG 00 01 12 07。ISOの2006年度版CGL Policyですが、多分上記で取り上げた部分の文言には最新版でも変更はないかと。。。


*2 Known Loss Doctrineは元々はコモンローで、州によって制定法で定めているところもあり、更に保険約款の中にも文言として挿入され、また定義も州によってまちまちという認識。なので確信はないです。あしからず。。。