吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK | レフティやすおの作文工房

吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK

ゲスト講師のプレゼンを受けて、古今東西の“名著”を25分の番組4回100分で読み解く番組、

「NHKテレビ100分de名著」 2012年1月の放送は、吉田兼好『徒然草』 です。


ゲスト講師は、『ヘタな人生論より枕草子』や『ヘタな人生論より徒然草』の著者でもある、荻野文子(予備校講師・文筆家)さん。

『ヘタな人生論より徒然草』河出書房新社(河出文庫版あり)2003.5 に対する出版社の内容案内は、


《徒然草から「兼好流・生きるヒント」のエッセンスを抜粋。現代語訳とともに、人生を歩むうえでのモノの見方や考え方を、著者ならではの軽妙洒脱な語り口で解説する。》

 

ヘタな人生論より徒然草 (河出文庫)/荻野 文子
¥599
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『徒然草』と言えば、『枕草子』と並んで随筆の古典として有名です。

《つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。》

私の印象では、女性の手になるだけあって、女性向けで抒情的で内向きの私的な随筆集という感じの『枕草子』に対し、

『徒然草』は、男性の書いたものだけに、男性向けで叙事的で雑学的な外向きの人生読本といったところです。


武家の時代である鎌倉時代の末期の人・兼好は、下級貴族の出としては、歌人としての名声とともに、それなりに出世したようです。

しかし、仕えていた帝の失脚とともに、宮仕えをやめ、出家。

出家といっても、歌人として都にも出向き、世間とは付かず離れずの暮らしぶりであったようです。

そして、後に『徒然草』と呼ばれる随筆を書き始めます。


人生の観察者として生涯を振り返りつつ、思うままに綴った、ちょいと思索的な随筆という意味では、モンテーニュ『エセー』にも似ているかもしれません。


鴨長明の『方丈記』がどことなく出世街道から外された人の恨みつらみのようなものを感じさせるのに比べて、兼好の『徒然草』には、自ら身を引いた人らしい醒めた視線、冷静に世間を見つめる態度といったものを感じます。


全243段からなる短文による随筆集です。


ですから、とっつきやすくどなたでもそこそこ読めます。


読めば納得!の文章もあれば、時に何これ?というものもありで、なかなか興味深いものです。


例えば、第百十七段に《友とするにわろき者、七つあり。》と言います。

一に《高くやんごとなき人》、二に《わかき人》、三に《病なく身つよき人》、四に《酒を好む人》、五に《武く勇める兵(つわもの)》、六に《虚言する人》、七に《欲ふかき人》

要するに付き合うのに疲れる人。


逆に《よき友に三つあり。》

一に《物くるる人》、二に《くすし》(お医者さんですね)、三に《智恵ある友》

知り合いにいると、便利な人。


「なるほど」と言えば「なるほど」ですが、ちょっと自分に都合がよすぎるきらいもあります。


第百三十四段には、《おのれを知るを、物知れる人といふべし。》とあり、まさにソクラテスの「汝自身を知れ」のパターンが見て取れます。


第三十五段には、《手のわろき人の、はばからず文かきちらすは、よし。みぐるしとて、人にかかするは、うるさし。》―字が下手でも自分で書きなさい、という。


 ・・・


私のおススメ入門書としましては、昨年惜しくもご逝去された谷沢永一先生の『知識ゼロからの徒然草入門』(幻冬舎 2006.12)。


知識ゼロからの徒然草入門/谷沢 永一
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主にサラリーマン向けといった感じですね。


これはという話題を選んで、古谷三敏さんのイラスト付の見開き2ページで解説してゆきます。

《古文の全文に拘わらず、現代人に必要な部分のみを摘出(ピックアップ)し、通読できる訳文を意図した》

ものとあります。


いかにも人間通の谷沢さんらしい選択と解説が楽しめます。


(上の例はこちらから取りました。)


 ・・・


さて昨夜は、その一回目。


第1回 心地よい人づきあいとは


【放送時間】 2012年1月4日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)

【再放送】 2012年1月11日(水)午前5:35~6:00/Eテレ(教育)       

2012年1月11日(水)午前11:30~11:55/Eテレ(教育)


上にも書きました友だち選びについて、人付き合いについて、そして男女のこと。人間関係に関してのお話でした。


人付き合いというものは、こちらの思いと向こうの思いの双方向性のものです。

こちらから行く場合、向こうから来る場合―。

赴くときと受け入れるときと―。

その両面から物事を捉えるのが兼好流というところでしょうか。


《同じ心》がキーワードだと荻野さんの言葉―。

そういう《同じ心》を持つ人と出会えれば、誠によき人生となるのでしょうが、現実は…。


一生独身を通したという兼好の人間に対する思いの複雑さ。

私も独身の身だけに分からぬこともありません。


 ・・・


荻野文子さんが、今後どのように読み解いて下さるのか、大いに楽しみです。


第2回 1月11日放送 上達の極意

第3回 1月18日放送 世間を見抜け

第4回 1月19日放送 人生を楽しむために


現在テキストも発売中!

○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」

兼好法師『徒然草』2012年1月

2011年12月24日発売 定価550円(本体524円)


兼好法師『徒然草』 2012年1月 (100分 de 名著)/著者不明
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※原典:

『徒然草』島内裕子/校訂・訳 ちくま学芸文庫 2010.4

徒然草 (ちくま学芸文庫)/島内 裕子
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『新訂 徒然草』西尾実・安良岡康作/校注 岩波文庫 1985.1  

新訂 徒然草 (岩波文庫)/吉田 兼好
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『改訂 徒然草―付現代語訳』今泉忠義/訳注 角川ソフィア文庫 1957.2

徒然草―付現代語訳 (角川ソフィア文庫 (SP12))/吉田 兼好
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『徒然草』角川書店/編 角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 2002.1

―現代語訳と原文で古典のエッセンスに触れる入門書。  

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※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より

「吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK」 を転載したものです。

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