「中学英語で十分」は本当だった!
英語学習で遠回りをしないために
本当なのだろうか? と思いながらも何か気になるのが中学英語です。書籍などでも、「中学」という言葉が入っているだけで気になるものですし、中学の教科書の英文と和訳を集めただけの本がベストセラーになるようなこともあります。
中学・高校・大学と散々英語を勉強してきて、今ごろどうして「中学英語?」ということなのですが、ここは素直に、それだけ英語で大変な目にあっている人がたくさんいると考えましょう。私もその一人です。
中学英語の語彙で驚きの表現力
中学英語について考えるには、まず英語そのものを2つの分野に分ける必要があります。それは、語彙と文法です。
まず語彙から考えると、これはさらに2つに分けることができます。available(利用可能である)、contribution(貢献)など高等な語彙と、have、take、on、inなどの基礎的な語彙です。後者が「中学英語」の語彙、正確には「中学レベルの語彙」ということになります。
あなたがもし、ビジネスで通用する英語を身に付けたいとすると、高等な語彙は避けて通ることはできません。もちろん、英語の学習は「何を目的にするか」ということがとても大切ですので、必ずしも何千もの語彙を覚えている必要はありませんが、それでも(中学レベル以上の)3000~4000語程度の高等語彙はあった方が良いと思います。
高等な語彙力があると、少なくとも相手の言っていることや書いていることが格段に理解しやすくなるので、大きな利点になります。
一方、基礎的な語彙の方ですが、これに関しては、中学英語は馬鹿にできません。例えば、
- 「When did you learn it?」(いつそれを知ったの?)
- 「How did it go?」([交渉やプレゼンなどが]どうだった?)
- 「I think you’re missing a point.」(ポイントを外していると思う)
- 「I learned it the hard way.」([経験を得るのに]苦労しました=高い授業料を払いました)
- 「I can’t tell the difference.」(違いが分からない)
等々、使い様によって恐ろしい威力を発揮します。しかも、以上はすべて単語の意味を素直に使っていますが、イディオムを入れると中学英語はさらにパワーアップします。
- 「Put this English into Japanese, will youl?」(この英文を日本語にしてくれる?)
- 「Let’s move up the schedule.」(スケジュールを前倒しにしよう)
- 「I’ll take care of it.」([仕事の分担など]私がやります)
- 「I’ll look into it.」([データなど]調べてみます)
高校初歩の単語を使って良いのであれば、表現力は爆裂します。
- 「We put in a lot of time and effort.」(かなりの時間と労力をかけました)
- 「I signed up an English lesson.」(英語のレッスンに申し込みました)
- 「Is this a bad moment?」(今、都合悪いですか?)
- 「We should always try to meet the needs.」(常にニーズに応えるようにするべきだ)
高校の文法は中学英語でカバーできる
私たちの頭の中では、「文法=やっかい」という方程式があると思いますが、ここが驚くべきところで、中学英語で高校文法は完全にカバーできます。
「そんなはずはない。絶対にない」――今そう思われた方も多いと思います。なぜなら、(私の見てきた限りですが)中学で文法を習い始める時、つまり、所有代名詞や三人称単数でジャブを受けた時にフラつき、不定詞の3用法、5文型の分類でノックアウトされる人が多いからです。
流石に今では少なくなっているようですが、「I (主格)、my(所有格)、me(目的格)、mine(所有代名詞)」などの人称代名詞の説明や、「The speed of light is fast.(SVC)」、「Light travels fast.(SV)」、「What are there on the table?(SV)」などの分類が中学生にとっては難しいものです。ましてや、高校文法となると中学英語などでカバーできるハズがないと考えるのが普通です。
確かに、高校の文法書は厚く、たいていが300ページ以上あって、中を見ると自動詞・他動詞から始まって、分詞構文、限定用法、関係代名詞の継続用法、仮定法など、文法用語が目白押しになっています。私などは、お目出たくもこのすべてにひっかかりましたので、全くもって笑えないです。
そもそも、同じing形に数種類の文法分類があって、しかも、それが被っているのはなぜなのだろう? 「目的語」って、じつは文章に必須の言葉で、「補語」なのでは? でも、文法が非論理的なはずがない。文法書にも「文法が分かると英語が分かる」(=文法が分からないと英語は分からない)と書いてある。そうだ、ルールが分からずにルールが使えるはずがない。でも……。
そんなことを考えていて、勉強が進むわけもなく、ほどなく成績不振となったのでした。
話を戻しますと、今あげた文法項目、またそれ以外の文法項目も、ほぼすべて「中学英語」で理解できます。
仮定法というと、「事実と反対」「事実に反する」という言葉が頭の中に浮かんだ人がいるかも知れませんが、その切り口から入ると、英文法の本質がかえって分かり辛くなります。この点については、実社会に出て、本物の英語に触れるようになって初めて気づいた(そして、唖然とした)方も多いのではないでしょうか。私も「これはいったいどういう事なのだろう?」と、頭を捻ったものです。
いずれにしても、仮定法の基本から一歩進めて、例えば「could」 に「have+pp形」をくっつけると「時間のズレ」を表すことができます。例えば、「Without your help, I could have failed again.」についても、「君の助けが無ければ、また失敗していたかも知れません」という意味だという事が分かります。
要は、高校文法といっても、「中学英語でどう理解するか」ということに過ぎないのです。簡単に分かることをわざわざ難しく解説しているのが「高校文法」――そういう見方もできるかもしれません。文法にも色々な種類がありますので、色々な解説方法があって良いとは思いますが……。