女をなめんなよ~素直すぎる女の子スペシャル~ | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

私がチャラン・ポ・ランタン(通称チャランポ)を見て思ったのが「彼女たちなら “あゆ” をバカにできる!」とするなら、大森靖子(おおもりせいこ)には「やっと “あゆ” が正当に評価されるときが来た!」かも知れない。
浜崎あゆみの関連アーティストとして倖田來未や西野カナと言われてもいまひとつピンと来ない私には、やっと現れた、遅すぎると言っていいくらいのアーティストかも、大森さん。

といっても、大森さんこそが浜崎あゆみの正当な後継者であるとか思っているわけではないし、大森さんだって昔好んで聴いたり歌ったりしていたアーティストの中の一人にあゆがいるというだけで、大森さんくらいの世代だったらそういう人はたくさんいるのかも知れないし(そこ重要なんだが)、大森さん自身はハロー!プロジェクトに特別な思いがあるようだ。だから、浜崎あゆみを継承して欲しいとかそういうことではない。

チャラン・ポ・ランタンは、例えば、チャラン・ポ・ランタンを聴いてエゴ・ラッピンを思い浮かべる人がいるとする。それはわかるが、彼女たちならエゴ・ラッピンには越えられない壁を越えられそうで、「私ってばセンスいい。むふ。」というのを寄せつけないところがある。

とにかく、チャラン・ポ・ランタンと大森靖子は私にとって “希望” の女性アーティストだ。
(いちいち “あゆ” が出てきてしまうのは、それだけ私の中で女性アーティストの中心に “あゆ様” が鎮座してしまっているということであり、これはもう致し方のないことなのであーる)

チャラン・ポ・ランタン presents 『女をなめんなよ~素直すぎる女の子スペシャル~』
出演:チャラン・ポ・ランタン/大森靖子
2013年10月19日(土) 下北沢SHELTER


そんな二組が共演するとあっては、これはもう行く!行かねば!行った!

6月の『ぐるぐるTOIRO 2013』のとき、チャラン・ポ・ランタンと大森靖子の物販が隣で、私は密かにドキドキしていた。ご本人達のツイッターを見たら、そのとき会話を交わされていたようで、「何か面白いことをやりたいですね」というようなことをツイートされていたので、私の時代が来た!!と思った。わけもわからず。

『女をなめんなよ』というのは、チャラン・ポ・ランタンが企画する自主イベント。自主イベントでの共演ってのが嬉しい。
満員のシェルター。(私シェルター初めてだったのかそうでないのか思い出せない…)

チャランポのももちゃんによる影ナレ(ライブ前に注意事項などを案内するナレーション)、「ライブ中に携帯電話が鳴ると、大森靖子さまのギターが飛んでくるかも知れません」「最新の iPhone5S をいじってると、前バージョンの iPhone5 を買った直後に iPhone5S の発売を知ったというボーカルももが割りに来るかも知れません」といった注意事項があり、開演。

大森靖子。
ギター一本で弾き語り。一人っきりのステージ。

もっとわあわあ喚くようなステージを勝手に想像していたら、ちゃんと「音楽」だった。ギターの弦を弾く強弱だとか、その瞬間その瞬間のマイクとの距離の取り方まで計算されているような。もっと、メロディもへったくれもない音楽を、聴けたもんじゃないような音楽を、勝手に想像していたけど、ちゃんとメロディアスで抑揚があった。「おもてなし」さえ感じた。失礼なこと思っててすみませんでした。
けど、じゃあ、「な~んだ、演技か」となるのかというと、そうはならない。

そういえば、チャランポを初めて観たときと同じく、私は大森さんの CD も何も一枚も持ってない状態でここに飛び込んで来てしまった。

だからこれは後からタイトルを知ったのだけど「あたし天使の堪忍袋」という曲で、“あ あ あ” と歌う箇所があった。観客も一緒になって、知らなかった私もすぐに歌えるような合唱で、“あ あ あ”

そのとき、ああ、「庶民の歌」だなって思った。

MC で「色々やりきれないんでしょ? 私とかチャランポランタンとか聴いてるくらいだから。あははー」と笑っていたのが痛快だった。エレカシ宮本さんも「エレファントカシマシなんか聴きに来ちゃって、不器用だなーおい!」とか言ってたなぁ。

大森さんがチャランポと話すとき、「どうしよう。私これ、ものすごく嫌いかものすごく好きかのどちらかだ」と緊張しながら話したら、「ものすごく好きだった!よかったあ!」と言っていて可笑しかった。「小春姉さん!」って小春押しだったようだけど、「私、年上だったわ」と笑っていた。そうそう、「あははー!」って高らかに笑われるのよね。
小春さんはお姉さんだから(チャラン・ポ・ランタンは小春とももによる姉妹ユニット)姉御というイメージがあるかも知れないけど、楽屋では買った靴のことでももちゃんに怒られてしゅんとしてたよと、そんな裏話も教えてくれた。

道重さゆみさんに捧げたという新曲も披露(「ミッドナイト清純異性交遊」)。

色々あるけど、「ギターによる弾き語り」というのが大森さんの基本にあるんだと思った。

チャラン・ポ・ランタン。
ドラムのふーちんと三人編成。

こういう地下室的な会場で観るの盛り上がるわ!
というか、4回目にして、チャランポをこういう “ザ・ライブハウス” って場所で観るの初めてだったよ。

個性が強いようでいて、どんな会場どんな音楽どんな歌にも染まってしまえるところがあるのかもね。いやむしろ、それが染めるってことなのかもね。

ホーンもベースもなし、ボーカルとアコーディオンとドラムのみの編成で観るのは初めてで、音の数が少ない分、「歌詞」がくっきり伝わってきて、「物語」が鮮明に伝わってきた。

“今日はここにキズを付けようか”
“ミルクをくれないと引っ掻くよ”
“他の女にはその顔は見せないで”
“あたしの名前を呼んでよ”
“どこから呼ばれでも飛んでいくから”
……などと歌う「猫」の歌が気になった。「見えない首輪」という曲だって。『つがいの歯車』収録。

“求め合い、重なり合い、それだけの事よ~~” と歌う歌がとても印象に残って。いつものチャランポにはない感じがして。「好き同士」という曲で、CD には未収録のようだ。そういう曲がチャランポにはいっぱいありそうだ。

新曲「さよなら遊園地」も聴けた。今までにない懐かしさみたいなものを感じた。メルヘンチック? 夕暮れどきの団地の公園みたいな?

ガチャランポン(チャラン・ポ・ランタンの缶バッチが入ったガチャガチャ)を使ったステージも初めて観ることができた。
「私とずっとやり続けていられるって、ふーちん凄いと思う」って小春さんが言っていた。

途中、チラシを配ったときに、お客さん同士でチラシを回していったんだけど、小春さん、「これで出会いとかあるんじゃない? チャランポランタンで出会いとか! チャランポランタンも女の子結構いるんだよ(周りを見渡す)。何おまえら笑ってんだよ! ったく、だからいつまでも独りなんだよ!」、今日も絶好調です。チャランポのお客さんって、男の人が多いのかね~?
大森さんのことは「せいこたん♪」と仰ってました。(大森さんが話してたけど、一緒にお茶もしたそうな。そういや、ライブ前に三人でパフュームごっこしてたよね?)

後はいくつかのカバーと、いやぁ、まだ 4回しか観てないけど、ボーカルももちゃん凄いわ。「Oppai Boogie」とかどんどん凄いことになってるわ。

なんかね、この頃(今も?)私、都会に疲れてたというか(笑)、東京っていうか都会はもうやだぁとか思ってたんだけど、「都会もいいかもな」ってこの日は思えました。

チャラン・ポ・ランタン×大森靖子。
最後にコラボ!

大森さんもチャランポ衣装で登場。

一曲目、モーニング娘。の「シャボン玉」

“あんた名義の恋をしな!!”

チャランポのライブに “ギター” が入るのは珍しいのかも。いつもはない “ノイジー” な感じがいい。ガールズトークの “かしましい” 感じがいい。

間奏で大森さんが「本気で好きだって言ったじゃん!」って台詞を言うんだけど、横でももちゃんが「うんうん。電源切った方がいいよ! ほら! ほら!」って横槍だか相槌だかを入れるのが面白かったぁ。「ももはこういうヤツなんだよ~」って小春さん。

二曲目、チャラン・ポ・ランタンの「恋は盲目」

これ、初めてライブを観たとき(5/5 キネマ倶楽部)も強烈だったのでよぉ~く覚えてるんだけど、朗読するんだよ。キネマ倶楽部のときは、おそらくキン○コングとやり取りをしたチャランポへのネットの書き込みを朗読したんだけど、ああいう書き込みが本当にあったかどうかは知らないが、「ウザイ」とか「マジムカツク」とか「ブサイク」とか。「残念ながらあなた達のことは好きになれない。特に姉」とか。それを自ら読んじゃうからね。

この日は、大森さんがスマホを持ちながら朗読。

「おおもり “やすこ” 嫌い。メンヘラ。
 クリープハイプの次に嫌い」

まぁすごい。でも、私が一番心掴まれた朗読(早口)は、

「だぶりゅだぶりゅだぶりゅ (www)」

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後に、私は大森靖子のファーストアルバム『魔法が使えないなら死にたい』を買った。

そこにあった大森自身によるライナーノーツ(?)は、こんな一文から始まる。

「私たち87年生は生まれた瞬間から全てを得ていた、だからこそ全てを失っていた。」

モーニング娘。や浜崎あゆみを好んで歌っていたという彼女。どこで読んだかは忘れてしまったけど、「自分が好きになった人達は皆、ことごとくパクリと言われていた」と語っていた(正確な言葉じゃないですが)。

パクリなんてものは昔からあるんだろうけど、今のような時代、もう好きになったと同時に、それがパクリであると知らなくてはならない時代である。私くらいの世代だったら、好きになってからそれを知るまである程度時間が許されていたけど、今の時代は、もう本当に好きになったと同時、いや、もう好きになる前から知らなくてはならない状態やも知れない。

それは、どんな気がするだろうか。
ライク・ア・ローリング・ストーン。

それでも大森靖子は、モーニング娘。や浜崎あゆみを好んで歌い、銀杏BOYZ の峯田和伸に毎日メールを送り、そして今、歌を歌う。

銀杏BOYZ と浜崎あゆみを同列に聴いていたのか。

そこにこの世代の面白さがあると、私は期待している。

浜崎あゆみの関連アーティストとして、倖田來未や西野カナが出てくるのはわかるし、それがないとは私も言わない。けど、それだけじゃないじゃん。あのとき、たくさん埋もれてしまったものがあるじゃん。それを掘り起こしてくれると、私は大森靖子に期待しているのだろう。

『魔法が使えないなら死にたい』のジャケットを見てすぐに思い出したのは、もちろん椎名林檎の『勝訴ストリップ』。わざわざ言うのもバカバカしいくらい。

大森靖子は、やっと現れた、椎名林檎(の亡霊)を葬ってくれるアーティストになりえるのかもよ。ひょっとしたら、チャラン・ポ・ランタンもね。