ライアー交流会の思い出 | Al Cuore dell'Etna

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イタリア・シチリア島の活火山エトナに恋して、長年その麓で自活してきました。帰国した後もエトナ山の「心」に自分の一番良い物を捧げたい。今日も元気な活動を続けるもう一つの「エトナ」のお話しです。

春は変化の季節。

卒業、入社、転職、引っ越し、子どもたちの新しいステップなどなど・・・。

でも、もし50年住んでいた実家を取り壊して全員がお引っ越しともなれば大事件です。


今、我が家にはそんな話しが持ち上がっているせいで、勤め先の不動産屋の営業サンたちを巻き込んでバタバタしてしまい、せっかくのライアー交流会のお話しが全く書けませんでした。


だけどそれではステキな思い出が薄れてしまうのでモッタイナイ。
というわけで、今からでも思い出せる限りのことを書き止めておこうと思います。


5月10日はよく晴れた土曜日でした。
でも私の勤め先は土日が勤務日ですので、有給休暇を一日もらって参加いたしました。


当日は同じ市内にお住まいの先生が車で自宅までお迎えに来て下さって、会場である自由学園明日館へ向かいました。


先生は池袋にあるマンションにレッスン室をお持ちで、ピアノとライアーを教えておられます。

週に三回も車で通っていらっしゃるので、明日館へはいつもの慣れたルートだったんです。


大正10年に、偉大なアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの設計によって建設された明日館は、現在でも結婚式や会議、セミナーなどの会場として利用されています。


ちょうど交流会の時期にはバラを始め沢山の花々が庭に咲き乱れていたので、趣のある洋館がなお華やかに見えました!







室内は木の温もりを生かしたフローリングで、細長い窓がずっと連なっているチャペル風の構造になっています。


開場前にはライアー響会の方々が手分けをして、これらのイスを演奏者のために二重のロの字型に並べて下さっていました。




私と先生が到着したのは、開演の10分ほど前だったかな?

駐車場に止めた車の中で、コンビニで買ったおにぎりとお茶という簡単なお昼を済ませてから、後部座席に置いたライアーを持って会場に向かいました。


受付に行く途中でお会いした方々の何人かにご挨拶をしたら、けっこう沢山の奏者さんたちが既に私の顔を知っていたんですが・・・。


何なんでしょうね~~~?!


これが去年初めて交流会に一人で来た自分の一年後の姿とは、とても思えませんでした(笑)


この日は蒸し暑かったので、着てきたコートは車の中に置いて、吉祥寺のハーモニカ横丁で買った新しいシルクのスカーフを羽織って行きました。

先生も緑色の綺麗なグラデーションのスカーフを首にかけて、前に垂らしていらっしゃいました。



私のスカーフは大判で、緑から白へ、白から桃色へというグラデーションが入っていました。

たまたま、その緑色の部分を上にして首から垂らしていたら、「あ、先生とお揃いの色ですねー。ご相談してつけてきたんですか?」ってどなたかに聞かれたので、いやいや事前に服装の事など決めて来たわけじゃないんだけど、やっぱり先生とはご縁があるんだなァーと改めて思っちゃったりしたのであります(^o^)






席は演奏順に時計回りという決まりになっていましたので、まずは私たちの席を探して座ってから準備を始めました。


私の演奏はいつも暗譜。ですから楽譜立ては置かないのですが、チューニング機器を置くためには必要でしたから、それだけのために楽譜立てを組み立てました。


次にライアー立てを取りだして広げてから、ようやくライアーを取りだして調弦の開始。

それができてしまったら、楽譜立ては邪魔になるのでまた折りたたんでしまってしまい(笑) あとは開演を待つばかりです。


そう! 前回も書きましたが、私と先生の演奏はプログラムの一番最初になってしまったのですあせる


大勢の演奏を聞いて、それぞれの楽器の音色を楽しむことができる交流会。
私にとっては、ライアー奏者の前での初舞台ということになります。


この日にいらして下さったリスナーさんには、無料で聞いていただくことができました。

実は、Facebookを通してお友達になった方が一人と、小金井の母教会の奏楽家の方が一人、わざわざ私の演奏を聴きに遠くからいらして下さったんですよ~。
とっても嬉しかったんですが・・・同時にき、緊張が・・・汗汗汗


会場の人々のざわめきの中で、グロッケン(シュタイナー教育を取り入れた幼稚園などで用いる、小さな鉄琴の一種)の音が鳴り始めました。

小学校の鼓笛隊で使ったような鉄琴よりも、うんと小さくて優しい感じがする音です。


それでも開演を告げるグロッケンの音の意味がわかっている人々はたちまち静かになって、いよいよライアー響会主催による交流会の第一部が始まりました。


演奏中の撮影は禁止だったので、先生とライアーを弾いている時の写真はありませんでしたが、お友達が開演前にスマホで全体写真を撮ってくれました。

さて、私と先生はどこにいるでしょー?!




このように第一部の演奏者は二重の円になってスタンバイしていて、階段を上がった所にある上の二重列には夕方からの第二部に出演される方々や、リスナーさん達が座っていました。


ライアー響会の代表者から開会のご挨拶があって、いよいよプログラムの開始。

「プログラム1番はFElicità(フェリチタ)です。それではお願いします」


まずはご挨拶をしなくては・・・しかし持ち時間はグループの場合は6分。

演奏時間が今回は4分半になりますから、ご挨拶も事前にちゃんとまとめておかないとうまく話すことはできませんよね。


響会のお友達がいつもとは変わったオープニングを期待しているという噂なんかも飛んでいたしなぁ、まぁいいや、気軽に喋っちゃえ!!!


「え~、1番!!


早速席から笑いが。

お隣に座っている先生も笑ってしまいました。


「良かったー。誰もカーーンって言わないから、続けてもいいですね?」


またもやみんなの笑い声。

だけど、今のご時世、のど自慢大会なんか見てる人ってどんくらいいたのかな。


「ライアーを習う時に、色々と不安なことがありました。一番大きな心配事は、目が不自由な人にこの楽器が弾けるんだろうか?ということだったのです。」


おお、いきなりマジメになりますかにひひ


「でも、ふじこ先生や仲良くしてくださった皆さんからの励ましのおかげで、こうして無事にライアー歴1年を迎えることができました。ありがとうございます」


こういう言い方にまとめるの、ちょっと苦労したんですよね~(笑)


「グループ名のFElicitàというのは、イタリア語で「幸福」という意味の言葉です。ふじこ先生のFと、私エトナのEを頭文字に取っていて、二人で世界の人々に幸せを届けられるようになれたらいいなァ、という願いを込めてつけました」


先生は聞きながら楽しそうに笑っていました。

いつかシチリア島に行って、Fujiko&Etnaの演奏を沢山のお友達に聞かせたいなーっていうお話しをしていたんですよね。

二人の名前だけでもシチリアーノたちにはウケそうなんですが。


そうなんです。FとEは富士山とエトナ山の頭文字でもあったんです。

昨年、私がライアーを習い始めたと同時に、ユネスコによってこの二つの山が同時に世界遺産に登録されたものですから、FElicitàの名前には「世界遺産コンビ」っていう意味も隠していたんです。


でもそれを言っちゃったら話しがデカすぎて、一年生なのに目立ちすぎちゃうな~と心配しまして(←いや、すでに手遅れ感が…w)紹介ははしょってしまいました(笑)


「今回は、聖フランチェスコの映画のテーマ曲をイタリア語から日本語に訳してみましたので、ぜひ聴いてください」


と言ってライアーを持ち直すと、会場から沢山の拍手がいただけました。

ってオ~~~イ、演奏これからなんですけど~(爆)


しばらく前から深呼吸をして落ち着こうとしていたのに、なんと、指が細かく震えちゃってました。

ライアー奏者のお友達が、「緊張すると指が震える」ってよく言っていたけれども、クリスマス会やイースターで私が経験した演奏では、上がっても指が震えることなんかなかったのに・・・。


やっぱり聞いている方々が演奏家ばかりだと、緊張の度合いが違うのかも知れません。


今になって演奏を振り返ってみると、プログラム1番になって(今回に限っては)良かったんじゃないかなと思ったことがありました。


その理由は演奏曲 Dolce Sentireの前奏の前に、教会の鐘の音をライアーで表現して入れたことが、演奏会のオープニングの効果を出すことに成功したからです。


曲がニ長調だったので、ラとファ♯の3度の、スピードが異なる鐘の追いかけっこ。そのハーモニーに重なるように鳴り響くレ・ラ・レの大聖堂の鐘と、小さなファンファーレのような小メロディーを使うことで、「これからライアーの交流会が始まりますよー」っていう雰囲気が演出できたような気がします。


この「ライアーで鐘の音を入れよう」という発想は、戦争に行って熱病にかかり、実家に送り返された聖フランチェスコが目を覚ました朝に、きっと窓越しに聞いたであろうアッシジの教会の音と、私のあるイタリアでの記憶が重なったからなんです。

私自身も1992年の暮れに当時イタリアで猛威をふるっていたパナマ風邪(インフルエンザの一種)にかかってしまいまして、41℃という高熱を出してたった一人で寝込んでいました。
熱が下がって回復に向かっていることに気づいた元旦、晴れ渡る青空に響いていた村の高らかな鐘の音を聞いて元気になれたことを思い出して、聖フランチェスコの歌の時にあの鐘を表現してみようって思いついたというわけ。


Dolce Sentire(Fratello Sole Solella Luna)は、イタリアではCantico Sacro(カンティコ・サクロ、聖歌) と呼ばれ、いわゆる讃美歌に位置づけられています。

ですから普通のポップスとは違った、ちょっと神聖な雰囲気を入れたかったということもあったかもしれませんね。


演奏中に、まるで写真のように脳裏に焼きついたシーンが二つできました。

一つは弾いているライアーの上に揺れていた木漏れ日や、窓の外で風にそよぐ木々の葉っぱの緑。


もう一つは、歌と演奏が無事に終わって(最後で1回だけコケたんですけどw)正面にお辞儀してから、お隣の先生にもお辞儀した時に、ご自分のライアーの上で大きな拍手をしながら私を見ていて下さった先生の笑顔です。


なんだか、初めて子どもが歩いた姿を見て喜ぶお母さんみたいに、とっても嬉しそうでした。

去年の時点で訳詞を楽譜に乗せて書いてみた時から、「この歌は泣けるんです」という感想を言っていた方がいらっしゃったのですが、第一部のお休み時間になってみると、「歌を聞いてたら涙が・・・」と言ってくださった方が何人もいてびっくりしてしまいました。


イタリア語で歌っていた時には、まぁ、好きで歌っていたんだけれども、そんな風に泣きそうになるような感動は味わったことなかったんだけどなぁ。


おそらく欧米人には自然は被造物(神から造られた物)であり、人間だけに魂があるという宗教観念があるのに対して、日本人には神道の影響で、自然と人間は兄弟姉妹とか、友達とか、家族とかいう感覚を強く持っているために、聖フランチェスコの歌に共鳴する心を持っているんだと思います。(だからジブリ映画なんかも好まれるんだと思うんですよ。。。)


なので、ちょっと日本人の感性向けに言葉を選んでメロディーに乗せているということもあって、そんな風に泣けるなんて言っていただけたら、訳者としては嬉しい限りです。


せっかく真心を込めて訳した曲ですから、ぜひ演奏家の皆さん、日本語で歌ってみてくださいね!

楽譜は近々公開しますので音譜


で、自分の初舞台のことに関してはそれくらいにして、今回も沢山の参加者の皆さんの演奏や、歌を楽しむことができました。


独奏される方あり、ユニット演奏あり、グループ演奏あり、弾き歌いあり、プロの声楽家の声で歌う方あり、ライアーに合わせた合唱あり・・・。


ただ、去年のようにライアーの音って綺麗だなぁ、というだけの聞き方はしていなかったように思います。


一年も経って色々な奏者さんのCDやコンサートを聞いたりしているうちに、学ぶことも多かったのでしょう。

歌声とライアーの音の大きさのバランスはどうかな?
知っている曲をこんな風に編曲したのか。すごいな。

この曲って独奏できるんだ、私も弾いてみたいな。

ライアー演奏の音の大きさは人によってマチマチなんだな。

グループ演奏は息を合わせるのが大変だけど、素晴らしいな!

などなど・・・・。


そして第一部と第二部のおしまいには、全員が参加できる合奏がありました。

課題曲は昨年と同じで、「精霊の踊り」「春のあいさつ」「お祝いのカノン」の3曲。


特にグルックの「精霊の踊り」は、私に「ライアーを練習して、来年はあの曲をみんなと一緒に弾いてみたい!」という強い決心をもたらした曲でしたので、念願叶って全体演奏に参加できたことはとっても嬉しいことでした。


だから、弾く人が多いメロディーの方ではなくて、やってみたかった第二ソプラノのパートを一生懸命練習してみたんです。
指の動きがチョコチョコしているので、弾き慣れるのが大変でしたが、何とか交流会に間に合うように、ミスなく弾けるようにすることができました。


お休み時間もたっぷり1時間ありましたので、本当の意味で大勢の方々と交流できましたし、Facebookだけで繋がっていたお友達ともリアルでお話しができました。


第二部の終わりになって、思いもがけないお知らせたありました。

自由学園の明日館がこれから数年かけて耐震工事を予定しているとのことで、しばらくの間は良い会場が見つからないため、ライアー交流会は一旦これでおしまいということになったんです。


残念なニュースでしたが、本当にそうであるならば「来年の交流会にはあそこで演奏できるようになったらいいな」という去年の私の夢がギリギリで叶えられたことを、心から神さまと先生、そしてライアー関係のお友達の皆さんに感謝しなくてはならないと思いました。


さぁ、交流会という一区切りができました。

これからはクリスマスに向けて練習がんばりま~す!!!