・チベット大規模争乱で中国側の発砲による死者は100人以上か ~これを契機にチベット問題解決を~
インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府は15日、中国南西部チベット自治区で発生した騒乱で「著しい人権侵害」があったとして、国連に調査を要請した。亡命政府は未確認の情報ながら、約100人の死者が出ていると主張している。
チベット亡命政府は声明で、「チベットへ直ちに国連代表団を送り、現地でどういった人権侵害がなされたかを調査してもらいたい。これまで中国政府への抗議行動を平和的に行ってきた多くのチベット人を、無差別に殺し、傷つけ、拘束するという事態に、深い懸念を抱いている」と述べた。
また、抗議活動はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの亡命につながった「チベット動乱」から49周年を迎えた3月10日に始まったとして、騒乱は弾圧的な中国政府による支配の結果、引き起こされたと指摘した。
「自治区の中心都市ラサでは約100人の死者が出て、戒厳令が敷かれたとの情報もある。今回の抗議活動は、中国政府の弾圧から自由になりたいと願う、チベット人の本音が現れたものだ」としている。(c)AFP
「自首せよ」チベット情勢で治安当局 死者は10人、増える可能性も:産経
中国のチベット自治区ラサで起きた僧侶らによる大規模騒乱で、国営新華社通信は15日、死者が10人でいずれも市民が巻き添えになり焼死したと伝えた。同自治区公安庁は、「無実の市民が殺害された」と当局による鎮圧の正当性をアピール。国際社会の懸念が強まる中、自治区司法当局は同日、騒乱に関与した者に対し、18日午前零時までに自首するよう通告した。
新華社電によると、死亡した10人には、ホテル従業員2人、商店経営者2人が含まれているという。このほか、暴動で多数の警察官が重傷を負い、放火などにより40カ所で大規模な火災がおきるなど計160カ所で炎が上がった。さらに、略奪が発生し、鉄棒や刀を持った者がいたという。
現地当局は市民に対し、自首すれば処罰を軽減する一方、自首を拒んだ者は厳罰に処すとし、密告も奨励しているという。チベット自治区当局者は「暴動はダライ(・ラマ14世)集団が策動した。十分な証拠がある」と批判した。(後略)
昨日、ラサの僧院を中国軍が包囲しているというニュースを書きましたが、とうとう多数の死者が出る事態に発展しました。1950年から始まった中国によるチベット侵略、その際に行われた大虐殺、また今なお行われる宗教・文化の制限、中国人との混血による民族消滅政策は、国を奪われ、民族そのものを消されようとしているチベットの人々の怒りに火を付けました。明かな侵略行為と人権侵害についてどれだけチベットの人々は苦しんでいたのでしょうか。
この事態に、チベットについての報道が極端に消極的な日本のメディアもさすがにトップニュースに近い扱いで報道をしています。
中国はチベットへの外国メディアの進入を禁止していますので、今現在チベットでどのような混乱があり、どのような虐殺が行われているのかは正確な情報は掴めません。チベット人が黒い軍の車で連行され、銃殺されており、寺院には遺体が並んでいるという情報もあります。
一方で、この手の情報は言論統制、報道管制を敷いて一切外に情報を出さない中国政府が、動画まで交えて異例の報道を行っています。しかしその内容は、死者はわずか10人で、暴徒化したチベット人が諸悪の権化であるという印象操作を行う内容となっており、動画も商店や車を破壊する市民の姿のみを写し、それを鎮圧しようとする警察や軍の映像は一切流していません。
中国はあえて操作された情報を流すことにより、世界に対して、一部の暴徒化したチベット人を鎮圧しただけで大した問題ではない。ということをアピールしたいという意図がはっきりと透けて見えます。いつもはダンマリを決め込むだけの中国政府が、そんな小細工をしなければならないほど、この問題は中国にとって”痛い”問題なのです。
この問題に対して、アメリカ、EU、フランス、イタリアが公式に中国政府に対して抗議を行っています。それは武力行使や人権侵害について中国政府に対して強い抗議を行った具体的な内容のものです。特にフランスは北京オリンピックへの影響について明言してます。
一方で日本はどうでしょうか。本日夜に、町村官房長官がやっと声明を出しましたが、その内容は「基本的には中国の国内問題とはいうものの、双方が自制して混乱が拡大しないことを望みたい」でした。”中国の国内問題”と中国擁護の姿勢を崩さないばかりか、両方とも自制して欲しいと、どっちつかずの声名。これは抗議ではありません。どちらかと言えば中国を擁護したに近いと言っても良いかも知れません。まあ、閣僚が「チベット」という単語を発言しただけでも日本にとっては随分と進歩したのかもしれませんが、実際武力行使により犠牲者が出ているのが確実な段階で、「中国政府の武力行使に対して遺憾に思う」くらいの発言はできないものなのでしょうか。本当に情けないものです。
人権擁護法案などというおかしな法案を考えている暇があったら、日本政府は隣国で行われている人権蹂躙政策について少しでも考えてみたらいかがでしょうか。
中国政府は事態の沈静化に躍起になっていますが、インド、アメリカ、イギリスなど民間レベルでも世界中で抗議デモが起きています。これを契機にトルキスタンなど他の地域も含めて、中国の傲慢な占領政策に苦しむ地域が1日でも早く開放されることを強く願います。
参考書籍:
中国はいかにチベットを侵略したか
マイケル ダナム Mikel Dunham 山際 素男
囚われのチベットの少女
フィリップ ブルサール ダニエル ラン Philippe Broussard
ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)
ダライラマ The Dalai Lama of Tibet 山際 素男