・パトリオット配備はアジア諸国を刺激する ~左派新聞の稚拙な批判を読む~
PAC3*議論置き去りの配備だ(北海道新聞:3月31日社説)
飛んで来たミサイルを空中で撃ち落とす。テレビゲームの世界のようなことが、日本で現実のものになりつつある。航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が初めて入間基地(埼玉県)に配備された。防衛省はこのあと、二○一○年度までに首都圏や西日本各地に順次導入していく。同時に海上配備型のSM3のイージス艦への搭載も進めるという。 日本と米国が共同開発しているミサイル防衛(MD)は、日米の軍事一体化に拍車をかけるものだ。しかし、問題はそれにとどまらない。「専守防衛」を踏み外すのではないか。アジアの緊張をいたずらに高めることにはならないか。 そんな懸念が膨らむのは、配備ばかりが先行して国民への説明も議論も置き去りになっているからだ。
専守防衛を国是とする日本は、憲法で集団的自衛権の行使を禁じている。だが、安倍晋三首相はMDの運用を念頭に置き、その解釈見直しを研究するといっている。そこには米国への配慮ものぞく。ミサイルを迎撃するには、事前に発射の兆候をつかまなければならない。当然、日米間で高度な情報の共有が必要になる。これだけでも集団的自衛権の行使につながりかねない。
ましてや米国を狙ったミサイルを日本が迎撃することは、専守防衛の原則からいって許されない。ただでさえミサイルの標的国を瞬時に見極めることは、極めて難しいといわれる。MDにはそんな危うさがある。 米国のシーファー駐日大使は先日、集団的自衛権について「解決されなければならない重大な問題だ」と語った。解釈論議が前に進まない日本へのいら立ちの表れだろう。
しかし政府は、○三年に福田康夫官房長官談話で「MDは第三国の防衛のために用いるものではない」と言明している。いくら米国にせっつかれようが日本にはできることとできないことがあると、きちんと主張すべきだ。
PAC3やSM3の配備という既成事実を積み上げて、なし崩しで集団的自衛権の行使に道を開くようなことがあってはならない。すでに政府は、MDの運用に関する緊急対処要領を決めている。緊急時には現場指揮官の判断でミサイルを迎撃できるようになったが、文民統制の観点から問題はないのか。MDシステムの構築には総額で八千億-一兆円もの巨費がかかるが、精度はそれほど高くないとされる。果たしてコストに見合うシステムなのか。迎撃基地周辺の住民には、ミサイル攻撃の標的になるのではないかという不安もある。政府には、こうした疑問にも丁寧に答えてもらいたい。
先月末に沖縄の米軍基地に続き、埼玉の入間基地にもMDシステムの一環としてパトリオットPAC3が配備されました。このニュースについて、上記で取り上げた北海道新聞をはじめ、左派系新聞では批判的な社説が相次ぎました。各紙内容はほぼ同じで、迎撃ミサイル配備がアジア地域の脅威を高めることになる。軍事大国化の一環だという内容と共に、MDシステムは米軍との連携が欠かせず、集団的自衛権の行使に繋がり、専守防衛の概念から外れてしまう。しかも100%の確率で撃ち落せるわけではないしくみに巨費を投じるのはけしからんという内容でした。
反日も結構ですが、この内容は全く理解に苦しみます。だいたい、迎撃にしか使えない対空ミサイルを配備することで他国に脅威を与えるという意味が私には全く理解できません。批判すべきは日本に向けて弾道ミサイルを配備している北朝鮮や中国の方であり、これらの国々が弾道ミサイルの配備をやめれば日本はこのような対応を取る必要はないのです。牙を向けている国に対して自分を守る為に盾を持つことを批判することの意味が分かりません。また、いつ核ミサイルを撃ってきてもおかしくない国家が隣に存在しているという目の前に迫った脅威がある上、たとえ100%の確率ではなくても、発射された核ミサイルが着弾する可能性を少しでも防げる手段が現行ではこれしかない以上、今取り得るベストの対応がこれなのです。今お金をケチった為に核ミサイルが着弾し、何十、何百万という人が死亡した場合に北海道新聞は何と社説を書くのでしょうか。
またMDシステムは集団的自衛権の行使に繋がると得意気に書いていますが、米軍の手を一切借りないとすれば、日本は北朝鮮や中国の軍事的脅威から全てを自前の軍備で身を守らなければならないことになります。高性能の偵察衛星から迎撃ミサイル開発、さらに極論を言えば抑止力として核兵器までを自前で用意しろと北海道新聞は言うのでしょうか。
批判も結構ですが、批判するだけでは国家は守れません。冷戦時代以上の脅威がすぐ隣に存在している現在、迎撃ミサイルもなし、米軍もなし、自前の盾も許さないという状況でどのように日本を守ったら良いのでしょうか。北海道新聞の言葉を借りれば、「こうした疑問にしっかりと答えてもらいたい」です。
参考書籍:
ミサイル防衛 日本は脅威にどう立ち向かうのか
能勢 伸之