・書評:「論日本」 | アジアの真実

・書評:「論日本」

論日本
於信 強
4893086464


 この書籍は、著者によれば、中国の人気アーティスト?である著者が、小林よしのり氏の「台湾論」 を読んだことに触発され、日中の歴史の真実を語る責務を感じて、多くの取材や歴史資料にあたって描いた漫画であるということです。言わば中国版「ゴーマニズム宣言」、または中国版「嫌韓流」であるといったところでしょうか。

 読んでみると、漫画というよりは”自分の言いたいことにイラストを添えた”という構成になっています。肝心の内容ですが、近世、現代のみならず、日本の中世からの歴史のエピソードを取り上げ、日本人の特性を解説しながら、その中に反日的な意味を無理矢理こじつけ、結果中国という存在の正当性を説くという内容になっています。しかし、そのエピソードは多くの取材や歴史資料にあたったと言いつつ、その出展元が書かれていることはほとんどなく、ご多分に漏れず独断と偏見に満ちた内容となっています。、 おもしろい内容をいくつか挙げれば、


・日本の昔話の桃太郎と中国の昔話である西遊記を比べてみると、桃太郎は罪もない鬼を勝手に征伐し、宝物を奪い取った。征服者である桃太郎を村の人は英雄として称えた。これこそが日本人の本質である。しかし孫悟空は三蔵法師を助け、妖怪を殺すことなく改心させただけなのである・・・

・日本の教師は入学したばかりの子供に「リンゴはおいしいかい?でも中国のリンゴはもっとおいしい。中国を征服すればおいしいリンゴがたくさん食べられるんだよ」と教えている・・・


 そして最後には、”日本の歴史教科書改竄、靖国参拝等を行いアジア諸国の感情を踏みにじる身勝手な行動は、偏屈で非理性的、幼児的な日本人の特徴を世界に示している。”と締めくくっています。 結局結論は予想通りここに行き着いています。

 また、巻末に10ページにもわたって記されている注釈は、この本に書かれている歴史事実を、具体的にどこがどう間違っているかを、日本史講師である竹内睦泰氏によって詳しく解説してあります。これを読むだけでもおもしろいです。知識のある日本人が読めば、この本の内容の多くは読むに耐えないものばかりですが、読み方を変えれば中国人がどのような間違いと独断と偏見を基に日本を見ているかということを興味深く読み解くこともできます。


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