外から見ると小綺麗なので入ってみた。
数年前からチェンマイでは、日本食ブーム。あちこちに日本料理屋さんが出来ている。
ただ、何か違う。
日本だと、日本料理の板前=厳しい修行、と言うイメージを自分は持っているのだが、こちらでは、出店するお金が有れば、誰でもすぐに日本料理店を出せる。
メニューを見たら、寿司などがあるが高いので、天ぷら蕎麦と太巻きを頼む事にした。
しかし、出て来た物を見て、❓であり、少し考えさせてもらった。
結構、量はある。
太巻きの上の白いツブツブはマヨネーズ。皿の上にはマヨネーズと味噌がフレンチのソースのように撒かれている。
中央には、わさび。
太巻きにわさびが付いてないのが多いが、この店ではわさびが付いている。
そして、次に登場したのは、天ぷら蕎麦。
日本の天ぷら蕎麦では、お目にかかれない物が載ってます。
メンマと海苔。
蕎麦とラーメンの見事なコラボレーション。
そして、考えさせてもらいました。
これらの品々は、ここの料理人が、日本料理を知らないで作っているのか?それとも、日本料理を知った上で、創作しているのか?
タイで日本料理を本気で作るのは、正直、大変だと思う。
まず、ダシ。
いい昆布やいい鰹節などが手に入りにくい。また、いい醤油も。
いい物を手に入れようとしたら高くなってしまう。
日本に帰った時に、関西炊きの「常夜灯」以外に自分が行く店が有る。
その店は、決して高級料亭ではないけれどしっかり作っている。
そこは、京都映画村の前にある店で、外から見たら昭和の香りのする普通の定食屋さんである。
定食屋の料理を作っているのは70歳を超えた女性。
「常夜灯」の平均年齢85歳以上に比べると若手であるが、まさにおふくろの味を出してくれる。
行ったのは5月中旬。
ごはんは旬の豆ごはん。
おかずは、だいこんと山菜の煮物。
この煮物のダシ加減が凄い。
真ん中は、菜の花の辛子和えと京都の千枚漬け。この千枚漬けは自家製。
あんまり美味いので定食のお代わりをしたらおかずを変えてくれた。
定食はデザートもついて700円。
ここのお母さん、ただ者ではないな、と声をかけた。
やっぱり、ただ者ではなかった。
元々は、京都の料亭で料理人をされていた方だった。
タイチェンマイからの一時帰国で、去年、ここの料理を食べたのが忘れられずに、また、来させてもらった、と言うと、喜んでくれて話が弾んだ。
「次、来てくれはる時は、先に言うてくれはったら、メニューにはないけど、お客さんやったらハモしゃぶ作らせてもらいます。」と言ってくれた。
700円で出すには、高級な鰹節や昆布、それに醤油を使っていたのでは割に合わないかもしれない。
どのレベルのダシの材料を使われているのかはわからないが、その煮出す時間や塩、醤油の量などが絶妙なのである。
料理人は、「客が美味しかった。」と言ってくれた時がやはり嬉しいだろう。
もっと、もっとプロの世界になると、美味しいのは当たり前、それ以上の反応が客に出るのを腹の中で喜ぶ世界になるんだろう。
ジムの近所にある日本料理屋の料理は、見てくれの方に重点が行ってしまったようで、創作日本料理と考えたら味は悪くはない。が、値段は、京都の定食屋さんより遥かに高い。そして味も自分にとっては定食屋さんに及ばないと思う。
日本でさえも、きっちりダシをとって手間をかけて作っている所は少ない。また、化学調味料の味に慣れた舌を持った客には、手間をかけた物も即席な物も変わらないのかもしれない。
自分が、違いがわかる舌を持っているとは、決して思わないが、手間暇かけて作ろうとしてくれている思いを嗅ぎ分ける事が出来るようにはなりたいと思う。
それは、決して高級志向ではなくて、安い材料でも工夫をして美味しくしているのを嗅ぎ分ける、客に喜んで貰おうとしてくれている料理人の心を嗅ぎ分ける事である。
どうだ〜と威張った雰囲気の料理人は苦手だ。
確かにタイで日本料理を作るには難しい環境だけど、いつか、自分を唸らしてくれるような店に出会いたいものである。