右腕のテニス肘で来院いただいた患者さま。
整形外科や治療院で治療を受けても痛みがとれないということで、ご紹介で来院。
初回の施術は、[胸部から右手にかけてトリガーポイントマッサージ] [筋膜リリースによる姿勢矯正] [太陰脾経と少陽胆経の鍼治療]
翌日にもみ返しで右肘が重かったものの、その次の日から痛みが消失。
初診から9日後の寒い日にテニスをしてから、ジンジンするような痛みが右肘に戻ってきた。
2回目の施術は初回から15日後。
日中は痛みを感じないけれど、テニスをしている時と就寝時にジンジンと右肘が痛む。
初回の施術に加え、右外側上顆にクリーム(市販の乳液)を使ったマッサージ。 特に右外側上顆から尺骨に沿って存在する硬結を対象に施術。
3回目は2回目の1ヶ月(36日)後。
右肘はテニスをしても痛みはないけれど、その夜の就寝時に痛む。
テニスで肘が痛むフォームをみせていただくと、右腕でフォアハンドをすると右外側上顆に負担を感じるとのこと。
一般的には外側上顆はバックハンドで負担がかかる場所なのですが、今回の患者さまはバックハンドは両手で行うので負担はかからないとのこと。
そして、「フォアハンドでラケットを振るときに、『手首をフラフラさせてるね』って指摘されるんですけど無意識なんです」。
リーディングエッジの概念が理解できていると簡単なのですが、患者さまは小指の握りが甘く、親指・人差し指をメインにラケットを握ることでフォアハンドの動きをしていました。
適当な長さの棒を握っていただき先端を柱にあて抵抗をかけながら、親指でしっかり握ってフォアハンドの動き。
次に小指でしっかり握ってフォアハンドの動き。
比べることで、親指で握ると肘に負担がかかり、小指で握るとしっかり力がはいることを実感していただきました。
肘から手首までには親指側にある[橈骨]と小指側にある[尺骨]という2つの骨があるのですが、手首を捻る(回内・回外する)とき尺骨が軸となり橈骨は周りを動きます。
つまり、テニスのフォアハンドの動きを[親指-橈骨]のラインを意識して行うと、尺骨についている筋肉が橈骨を安定させるために不自然な負荷がかかり炎症を起こしてしまいます。
『手首をフラフラさせてるね』という指摘も、不安定な[親指-橈骨]のラインでラケットを握っているから。
これは一般的な外側上顆炎とは機序も治療ポイントも異なるため、複数の医療機関で治療を受けても効果がでなかったのだと思われます。
この2つの緊張は、連鎖的に右大胸筋・右上腕外側・右橈骨・右親指のラインに緊張をおこします。
大腰筋の指圧のあと、左腸骨筋と左内腹斜筋、右外腹斜筋を筋膜リリース。
立って棒を握っていただくと、「自然に小指に力をいれて握れます」 「さっきは小指で握ろうとすると、頑張らなきゃいけなかったんです。 不思議・・・」
リーディングエッジは[先端が動きを導く]という概念で、親指は上腕二頭筋から大胸筋、小指は上腕三頭筋から広背筋という動きの流れを導いてくれる反面、体幹の緊張が先端部の使い方に制限を加えるという見方もできます。
今回はフォアハンドには不適切なリーディングエッジ(親指リード)を、体幹をリリースすることで適切なリーディングエッジ(小指リード)にする治療です。
根本的な治療は、初回から行うには見極めが必要です。
ご紹介で来院いただく患者さまは複数の治療を受けても改善せず、「もう治らないかも・・・」という気持ちを少なからず抱いています。
まずは[症状をとる]が最優先。
治る希望がでることで、はじめて全身と症状の関係に意識を向ける余裕がうまれます。
患部を触らずに症状が軽減しても、すぐに痛みが戻ってしまえば2回目の来院にためらいが生じるものです。
症状の根本にアプローチをしたくなるのは治療家として自然なことですが、患部へのアプローチも大切。
患者さまの心境も意識しなくては、時間のかかる治療は上手く行きません。