例えば… | IN VINO VERITAS

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とあるヴァイオリン弾きの日々雑感

音楽に国境は…

ある。

ウィンナーワルツも、ハンガリアンダンスも、阿波踊りとは違う。

それは大いなる国民性であり、文化であり、国境だと思う。
風土の違い、習慣の違い、言語の違いが生む異文化は、地図上の線引き以上に越え難い国境だ。

が、その壁は乗り越えられる。

正確に言うと「越える」のではなく、「理解する」ということ。

「血」は変えられない。
脈々と流れる大河の中で培われた何かを、そう簡単に消化して自分のものにすることはできない。

が、異質なものを理解するという行為は、人間に与えられた最高の才能だと思う。

目の前の譜面に書かれたロシアのメロディー、ボヘミアのリズム…その中には、私の身体の中にはない「血」が流れている。
だからこそ、それを「理解する」ことから始めなければ、書かれたことを100%再現することはできない。

日本語訛りのロシア語でも悪くないと思う。
けれど、まずは理解しようという姿勢が大事であり、理解するところからリズムは始まり、メロディーが生まれる…と私は思う。

リバーダンスを思い出す。
あの力強いステップと強烈なうねりはどこからくるのか…。

シベリウスの「フィンランディア」を思い出す。
独立への思いはなぜ静かな炎なのか…。

単なるイメージでもいい。
その明確なイメージの下、「こうありたい」という強い意志を持って音を出すこと。

それが音楽だと思う。