妊娠中に薬を飲んでも影響は無いですか?

妊婦健診でも
かなり多く受ける質問です

どうも

「妊娠中は全ての薬は使えない」

という考えを持つ方は
とても多い

確かに、妊娠と薬剤の影響を
キチンと考える様になったのは

サイドマイドによる影響
が明らかになってからです

ご存知ですか?
サリドマイド

産婦人科領域では
催奇形性(胎児に奇形を及ぼす)のある薬

筆頭に挙げられる
超有名な薬です

もともとは
妊娠中に安全に
服用できる睡眠剤、
つわりに非常に効果のある薬として
多く処方されていた薬でしたが

実は非常に強い奇形を誘発する
作用がある事が明らかになり
とても大きな問題に発展した薬です

サリドマイドwiki
↓↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/サリドマイド

この事件が起こったのが
1960年あたりですので

50年前くらい

50年というと
非常に長く感じますが

世代で言うと
1~2世代前
ですので

私達の母親や
祖母の世代にとっては
記憶に残る大ニュースであり

その世代にとっては

「妊娠中の内服は絶対悪!」

というイメージがあるのも
しょうがないと思います

この問題については
医学が間違っていた
という結論になるのですが

医学・科学というのは
今までも沢山の失敗を
経験してきました

しかし、
一番大事なのは

失敗から正しい方法を
構築していく


事です

奇しくも、
サリドマイド事件から
薬剤と妊娠については
様々な事が明らかになってきました

今回は
妊娠と薬について
ポイントを挙げていきます

それらのポイントを理解しないと

「妊娠中の薬は非常に悪!」
ちゃんとした知識も無いのに
なんでもかんでも医療悪を唱える人
コロッと騙されてしまいがちなので
是非注意して下さい

1)胎児への影響が強い時期
  そうでは無い時期がある

まずは一番重要な事から

薬剤による、胎児の奇形性が
最も強く出現しやすいのは

器官形成期(4-7週末)

という時期です

胎児の体というのは
40週間かけて徐々に
完成されるのでは無く

4-7週の間に
主要な臓器は、
ほぼ完成されます


そのため
この時期が
胎児が一番薬剤の影響を
受けやすいのです

器官形成期を中心に
妊娠期間中と薬剤の影響力を分けると
大まかに4つ分類できます

1:1-3週末
all or none の法則
という有名な言葉があり
(コレも医学生は良く知っている)

薬剤の影響が胎児にあった場合
流産を引き起こす可能性があるが

無事に育った場合は
奇形を引き起こさない時期
です

妊娠前に
薬を飲んでしまって
心配!

というケースは
経過を見ていくしか無いのですが
そのまま胎児が成長すれば
奇形の心配はあまりしなくても良いです

2:4-7週末
器官形成期
胎児の体ができるのに
最も重要な時期

リスクが高い薬剤は
なるべく避ける

また薬剤だけでなく
この時期は、神経系が作られるのに
葉酸が必要になる時期(~12週)

葉酸が足りないと
二分脊椎無脳症等
奇形になってしまう確率が
上昇してしまいます

それを防ぐ為に
葉酸サプリの内服
推奨されているけど

実は葉酸は
4~12週には十分にお母さんの
体内に存在しないと意味が無いので
妊娠前からサプリメントを内服するのが
理想的です


3:8-12週
器官形成期は終わっているけど
リスクの高い薬剤は
小奇形を誘発する時期

4:12週以降
胎児の奇形は起こさないが
薬剤の長期内服によって
胎児機能障害や胎児毒が起こる可能性はあるものの
比較的安全に薬剤は使用できる時期

この様に
胎児奇形のリスクによって
大きく4つに分類できます

もちろん
器官形成期には
なるべく薬は使用したくは
無いのですが

何も全ての薬剤が
サリドマイドの様に
強い奇形を引き起こす訳では
ありません

サリドマイド事件が起こるまでは
薬剤による胎児に対する影響は
あまり考慮されていなかったため

様々な薬剤が
妊婦さんに使用されていました

これまた奇しくも
それらの経験から
分かった事があります

2)リスクが高い薬と低い薬がある

実は妊娠中に
本当に胎児に危険性がある薬は
非常に限られています

サリドマイド

一部の
抗生剤
抗精神病薬
抗痙攣薬
抗甲状腺薬
免疫抑制剤
内服糖尿病薬
消炎鎮痛剤


ワーファリン

等です

これらから
妊娠と薬剤を考える上で
・内服時期
・薬の危険度


を考慮する事は
非常に大切です

さて、
それでも抗精神病薬抗痙攣薬等
飲み続けないといけない
薬は沢山あります

そう
次のポイントは

3)リスクと必要性を考慮する

どんな薬でもそうですが
副作用が全く無い薬等は
存在しません

(サプリ等も多かれ少なかれ)

薬を使用する時は
薬による利益不利益
常に天秤にかけて
必要性を判断します

妊娠中は、
尚更その【天秤】の考え方が
大事になります

妊娠中の薬はダメ!
と主張する人達は大概

薬を使わなかった場合の不利益

について
全くと言って良い程
言及ないのが
イタい所です


そりゃ必要無いなら
使わないに超した事は無いのが

当たり前~


ですもんね


さて、
それを理解した上で
先ほどの様に
どうしても必要な薬があったら

4)対応策を考える

多いのが

「胎児に影響あるのが怖くて
自己中断しました」


これはね
最も不適切な選択肢です


多くの薬は

体内の異常な命令系統に対して
それを抑えたり・補ったりして
正常なバランスを保つ役割を
担っています


急にこの助けが無くなると
異常な命令系統がリバウンドして、
今まで抑えていた症状が
一気に悪化するケースが多いです


そのため
薬の自己中断は
最もやってはならないのです

対応策としては

・薬を減らす
・薬を変える
・起こりうる影響をなるべく防ぐ


等が挙げられます

甲状腺薬なんかは
妊娠希望の女性に対しては
催奇形性が無い薬剤に
変更する事ができます

また
抗痙攣薬に関しては
もともと上述の二分脊椎等の
リスクが上昇してしまうのですが

葉酸内服量を増加させる事で
二分脊椎等の奇形を防ぐ事ができます


そのため

もともと通っていた病院に

妊娠している
もしくは
妊娠したい

旨をしっかりと伝えて
医者と一緒に対策を練る事が
とても大切です


さて

それでも
色々な不安が
まだまだあるという方には

こんなものもあります

5)妊娠と薬情報センター


HPより頂きました・・


やっとここまで来れた・・

上述した通り
サリドマイド事件をきっかけに

妊娠と薬については
現在進行形で、各国が協力し
膨大なデータを集め
薬剤の危険度を判断しています


もちろん
これらのデータは
医療機関だけでなく
一般の方々にも還元されるべきです

そこで我が国にも
データの蓄積及び還元を目的に
約10年前に登場したのが
妊娠と薬情報センターです
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

国立成育医療センターが
中心になっていて
妊婦さんは、心配な薬があれば
担当医に相談した上で
情報センターに問い合わせる事が可能です

さらに
相談件数の多い薬剤に関しては
直接電話で相談できる
仕組みにも
なっています

また、サイト自体にも
様々な有益な情報が掲載されているので
興味がある方は是非閲覧して下さい

さて、最後に
産科ガイドライン(2011)
に掲載されている
奇形を引き起こしやすい
代表的な薬剤一覧
を載せておきます

心配なものがあれば
情報センターを活用して下さいね

クリックで拡大
↓↓


産科診療ガイドライン2011より抜粋




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