シクレストの秀逸なパンフレット | kyupinの日記 気が向けば更新

シクレストの秀逸なパンフレット

 

今回は、シクレストのなかなか秀逸なパンフレットをアップすることにした。

 

「あれ、スターウォーズの後半は?」と思うかもしれないが、直接、精神科に関係のない記事を続けるのは読者の方も退屈だと思うので。それでも、年内にはアップする予定。

 

上のパンフレットは、Meiji Seika ファルマ株式会社による「統合失調症におけるシクレストへの切り替えのポイント」と言うタイトルが付けられている。(監修:関西医科大学、木下利彦教授)

 

 

上は、統合失調症の慢性化で辿る精神機能の低下のあり方(バリエーション)をグラフ化したもの。基本的に、再発がより悪い経過になりやすいことを示している、

 

下のグラフは、シクレストの効果の発現の流れである。「まあ、2週間は観察しないと、有意差が出るほどは改善しないよ」と言う意味だが、初期からなだらかに改善は診てとれるケースもあり、短い期間でこの薬が合っているかどうかわかることも多い。確実を期すなら1か月は診ましょうといったところか。

 

 

これは抗精神病薬を服薬するにあたり良く診られる副作用について記載されている。シクレスト(アセナピン)は広範な受容体のサブタイプを遮断するが、ムスカリン性アセチルコリン受容体への親和性は低いとされている。これは、同じカテゴリーの非定型抗精神病薬でもジプレキサとのけっこう大きな相違だと思う。

 

 

シクレストの切り替えの手法が記載されている。従来の新発売の抗精神病薬も切り替えの仕方を記載したパンフレットはあったが、ここまで具体的に記載されているのは比較的珍しいと思った。上のようにシクレストも基本的に上乗せである。CP換算が1000を超えているケースでは切り替えよりまず減薬を考慮せよとある。

 

一般に、非定型抗精神病薬は最高量投与してもCP換算値で1000㎎は超えない。したがって、CP換算値が1000㎎を超えるということは2剤以上投薬されていることを示す。

 

シクレストはやや重い印象だが、人によるとジプレキサより多い用量が服薬できることがある。この差は大きい。(増やすに増やせなかった人がシクレストに変更したために、幻聴が止まるまで増量できるなど。ただしこれは個人差がある)。

 

シクレストを投薬して3日目から前薬を減量すると良いと記載されている。

 

 

今回のMeiji Seika ファルマのパンフレットは、上のページが最も秀逸だと思う。このように、綺麗にしかも具体的に対処をまとめたものはあまりない。

 

前薬の減量の際の離脱に最も成功率が高く、後に大きな影響を残さないのは、まず元に戻すことである。これができない場合、精神症状が複雑化しやすく、奇妙なジストニアなどが長期にわたり残遺することがある。

 

変薬の際のトラブルは、撤退が基本である。