サインバルタ、よくある質問(前半) | kyupinの日記 気が向けば更新

サインバルタ、よくある質問(前半)

今日はサインバルタについて、医療現場(特にリエゾン)での患者さん、薬剤師、研修医からの質問をQ&A形式でアップすることにした。思いつくまま挙げるので一貫したものではなく、ややまとまらないかもしれない。また、意見が分れていたり統一した見解がないものあり、経験による記載もある。

 

Q1、サインバルタは20㎎未満の剤型がありませんが、10㎎だけ服薬できるのでしょうか?(よくある質問)

 

A1、脱カプセルでき服用した際、効果の実感も可能です。しかし、製薬会社は推奨していません。サインバルタは脱カプセルでは、作用が不安定になるらしく、メーカーが推奨し辛いと思われます。臨床場面では、特に忍容性が低いケースなどで10㎎程度から開始する医師もいるようです。

 

Q2、サインバルタはタバコの影響はどうなのでしょうか?

 

A2、結論的には「血中濃度が最高50%程度低下する可能性がある」といったところでしょうか?一般に、喫煙により、より効果が増すような向精神薬は滅多にありません。よく知られた薬剤はジプレキサの血中濃度低下ですが、たいていの向精神薬では、大なり小なり下がります。向精神薬で汎用される中で影響が少ないと考えられている薬はリフレックスです。

 

Q3、サインバルタを腎機能障害の人に使う際の目安のようなものはあるのでしょうか?

 

一般に腎機能障害を持つうつ病、うつ状態では、とりわけ良いと言う抗うつ剤はなく、相対的にまだ使える抗うつ剤として、レクサプロ、ジェイゾロフトなどが推奨されています。しかし、いつもこの薬でうつが解決するわけではありません。日本のサインバルタの添付文書では、高度の腎機能障害には禁忌とされています。しかし、添付文書をよく読むと、「軽度~中等度の腎障害には慎重投与」と記載されているので、腎障害の人には使えないわけではないです。高度の腎障害と中等度の腎障害とはどのような区別をしたらよいかですが、たぶん、GFRが基準になっている思われます。腎障害では、

 

中等度の腎障害(G3) GFR 30~59ml/分/1.73㎡

高度の腎障害(G4)  GFR  30ml/分/1.73㎡未満

 

とされており、GFRが30ml未満は高度な腎障害とみなしてよいと思われます。海外の薬物療法の書籍では、GFRが30を超えていれば用量調節は不要で、低用量から開始するように記載されています(30未満では禁忌)。このようなことから、腎障害に対するサインバルタは、処方できる範囲は直感より広いと言えます。しかし、腎障害患者にはサインバルタの選択は後回しにすべきです。Q1で記載した脱カプセルの手法は、リエゾンでGFRの低下がみられる高齢者へのサインバルタ処方では必須と言えます。

 

Q4、サインバルタはノルアドレナリンに影響しますが、心疾患や高血圧患者に使ってよいのでしょうか?

 

A4、心疾患、高血圧患者へはリフレックスが推奨されており、リスクの点では最も好ましい選択だと思われます。日本のサインバルタの添付文書では、心疾患、高血圧患者に対し、サインバルタは禁忌ではなく、慎重投与となっています。サインバルタは、脈拍を僅かに上げ血圧にも影響しますが、実臨床では投与後、困るほど高血圧を悪化させる人はほとんどいません。一般に、SSRIは心疾患があったとしてもうつ状態の治療に必要であれば推奨されます。また、SSRIは心筋梗塞を予防する効果がある可能性があり、未治療のうつ病は、心疾患の予後を悪化させると言われています(感覚的にもその通り)。心筋梗塞後のSSRI治療は控えるべきではないと言われる理由は、SSRIが不整脈を減少させることと、SSRIの抗凝固作用を通じて再発を予防することによります。結論的には、サインバルタは禁忌ではないが、他の抗うつ剤、リフレックスやSSRIを優先すべきといったところでしょう。(注意:サインバルタはSSRIではなくSNRI)

 

(中に続く)