季節外れの台風と精神症状の悪化について | kyupinの日記 気が向けば更新

季節外れの台風と精神症状の悪化について

先日、5月には珍しく台風がやってきた。天候と健康状態の関係で、よく言われているのが、

雨が降り始める前に古傷が痛む。

である。元巨人の長嶋監督は、現役時代、古傷が痛み始めるのでこれから雨が降るのがすぐにわかったそうである。また、交通事故などで鞭打ちをした人は、天候が悪化する前に吐き気がしたり気分が悪くなったりする。これらは、整形外科的な悪化である。

精神科でも天候が下り坂になるとはっきり不調になる人がいる。特に頭部外傷後遺症の人たち。

先日、台風が来る前日、数か月ぶりに再診した人がいた。その人によると、特に台風などが来るとイライラ感などが増し大変なことになるという。入院を強く希望したが、あいにく満床だったため、デパケンシロップを処方し待っておくように伝えた。

台風が過ぎ去ったためか、あるいはデパケンシロップの効果のためか、数日後には症状が軽快し、入院予約をキャンセルする電話があった。

その人は、確実にデパケンシロップが有効な人だが、改善した最も大きな理由は、台風が去ったことだと思う。その人はまたしばらくは再診しないであろう。

台風による悪化だが、一般に単に低気圧が通りすぎるより、明らかに悪化の規模が大きい。なぜ悪化するのかというと、たぶん湿気が増すことよりも気圧が下がることの方が大きいように見える。その思う理由は、雨が降り始めると症状が消失するか、かなり緩和すると言うからである。それでもなお謎がある。

航空機内は上空を飛んでいると、加圧されていても気圧は低い環境にある。着陸時に気圧が上がり始めると、耳の奥が痛くなったり、詰まった感覚になるのはそのためである。しかしながら、雨や台風が来ると明らかに悪化する人たちでも飛行機の旅行での悪化はないらしい。(一応、調査。関係ないと言うコメントが大半。ただし精神症状のため、飛行機に乗れないような人は除いている)

雨の日や、台風のような低気圧により悪化するのであれば、航空機内で悪化が見られてもおかしくない。ところがそうではないのである。

これはいろいろな考え方があるが、1つは気圧低下速度が航空機では早すぎるため、普通の低気圧や台風の通過のようにゆっくりとした変化ではないことが関係あるのかもしれない。

あるいは旅行をするあるいは機内にいるという非日常の環境、つまり交感神経優位の状況が、気圧低下による精神面の悪化を緩和している可能性もあると思われる。

これらは私見であるが、既に誰かが明快に答えを出しているのかもしれない。

参考
精神疾患における非日常の考え方(12)
最近、新患が多い
季節
もともとすこぶる良いようにはコントロールしていない
少量薬物療法の功罪