喫煙と向精神薬の効果の減少 | kyupinの日記 気が向けば更新

喫煙と向精神薬の効果の減少

抗精神病薬服薬時、喫煙は副作用を減弱させる作用を持つ。これは過去ログに記載している。

以下、「タバコ」から

精神疾患の患者さんがタバコを好むのは、いくつか考え方がある。 まず、タバコに含まれるニコチンの作用がなにがしか精神症状にメリットを与えており、その作用を求めて喫煙するのであろうというもの。 ニコチンは脳内の伝達物質の量を変化させ、適度の鎮静効果とそれとは逆の作用の覚醒効果を併せ持っているといわれる。 一般の人の喫煙者でも、イライラしたり集中できない時にタバコが吸いたくなるという。

(中略)

さて、タバコと精神科患者さんの話であるが、ニコチンには肝臓に働きかけて向精神薬の代謝を亢進させるため向精神薬の血中濃度を低める作用がある。(体内からの排出も促進しているという話もある) これは特に非定型精神病薬のジプレキサは有名で、ヘビースモーカーでは何割り増しかの薬物を服用しないといけなくなるらしい。 またニコチンは脳内のドーパミンの量を増やし働きを強める効果があり、特に抗精神病薬の嫌な副作用(錐体外路症状)を軽減する効果も持つ。 ニコチンは上記の鎮静効果とは逆に頭の働きを少しはっきりさせ元気にさせる効果も持つのである。 患者さんはそんなことを多分意識していないのだろうが、おそらく喫煙の習慣の原因になっていると思われる。


向精神薬の中で、喫煙時に喫煙時に大きく影響を受ける薬として、ジプレキサとサインバルタが知られている。モーズレイのガイドラインによると、

ジプレキサは、「喫煙時に血中濃度が最大50%低下する」。また、サインバルタは「血中濃度が最大50%低下する可能性がある」とされている。

向精神薬の喫煙の影響

ベンゾジアゼピン
血中濃度が0~50%低下する。

クロザリル
血中濃度が最大50%低下する。デパケンRを併用している人では血中濃度が更に低下する可能性がある。

デプロメール(ルボックス)
血中濃度が約3分の1低下する。

3環系抗うつ剤
血中濃度が25~50%低下する。

セレネース
血中濃度が20%低下する。

フルメジン

血中濃度が最大50%低下する。

リフレックス(レメロン)
不明だが、おそらく影響はほどんどない。

喫煙により向精神薬の血中濃度が低下する理由は、タバコには、一部の肝酵素(特にCYP1A2)(の活性上昇)を誘導する多環式芳香族炭化水素が含まれているためである。

ジプレキサは喫煙者は大きく効果が減損し、約倍量服薬しないと同じ効果が得られないと言われるのは、このような理由である。

しかし日本ではジプレキサはレセプト上、20㎎を超えて投与できない。効果をより発現させるためには、禁煙するしかないと言える。