患者さんのタバコ臭について | kyupinの日記 気が向けば更新

患者さんのタバコ臭について

ヘビースモーカーほど喫煙していないのに、異常なほどタバコ臭を放っている患者さんがいる。

健康な人は、喫煙者でもあのような臭いはしない。したがって、あの臭いにはある種の疾患性ないし、向精神薬の影響があると思われる。1つは、碌に入浴していないことも関係しているが、それを考慮しても、あの臭いは奇妙だと思う。

過去ログには、統合失調症にはいわゆる加齢臭がないという記載がある。ヘビースモーカーというほどではないのに、独特のタバコ臭がある人は年齢には関係がない

深く関係しているのは疾患の重篤さのようにも見える。あの臭いのある人で軽い人はほとんどいない。またその時に幻聴はあることもないこともあるので、陽性症状に必ずしも関係していない(重篤さとは陽性症状の有無だけでは決まらない)。

統合失調症の人では、タバコをやめさせると臭いはしなくなるので、年配の人では加齢臭がない分、ほとんど臭いがしなくなる。ただし、きちんと入浴していることが条件で、入浴をほとんどいない場合、浮浪者のような臭いがする。

タバコ臭が酷い人が外来診察を受けると、その強烈な臭いが診察室に残遺する。そのために消臭スプレーを使っている。次の患者さんに迷惑だからである。

あの臭いを消す最も簡単な方法は禁煙することだが、症状の重い精神病患者さんには難しすぎる。精神科患者さんの喫煙率は一般人口よりずっと高いのを見てもわかる。

従って症状を軽くすることも1つの方法なので、重い症状を改善するために入院させ、薬物治療徹底的に行い喫煙を控えさせると、実に小奇麗になる。ほぼ無臭。

しかし、退院させると元も木阿弥になることが多い。

ある時、薬の種類にも関係しているのではないかと思い、外来患者さんでジプレキサからエビリファイに切り替えた。この人は、ジプレキサとエビリファイの効果がほぼ同じで、エビリファイに替えたために、精神症状がより改善することはなかった。また体重も全然減らなかったのである。あまり予想していなかった、がっかりな結果である。(ただし、元々酷く肥満はしていない。標準体重の上限くらい)

それに加え、強烈なタバコ臭も変化しなかった。あれは、薬の種類が大きく関係しているともいえないのである。またこの患者さんの場合、高用量のジプレキサやエビリファイを使っていたわけでもない。

いわゆる、内因性疾患(統合失調症、双極性障害、非定型精神病など)以外の人で、あのような強烈なタバコ臭がする人は意外に診ない。すぐに思い出せないほど。

この強烈なタバコ臭いは、輪番時に来院する初診の人で経験することが多い。なんだかんだ言って、安定している外来レベルの患者さんで、このようにタバコ臭がある人は稀だからである。

輪番で最も感じることは、「病状が悪化している状態」が深く関係していることを示唆している。

あのタバコ臭は、疾患に由来するものなのか、薬物によるものなのか、未だに明確にわからないままである。

(この話には後半がある。前半とあまり関係ないけどね)

参考
統合失調症と加齢臭
マイルドセブン1日40本
タバコを吸うと幻聴が出るという話
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