自宅で家族に誤嚥が起こった時、どう対応するか? | kyupinの日記 気が向けば更新

自宅で家族に誤嚥が起こった時、どう対応するか?

ここ15年くらいで、精神科病院内で入院患者さんの誤嚥事故がかなり減った印象である。これには理由がある。

1つは、処方される抗精神病薬のうち、非定型精神病薬の比率が高くなり、誤嚥の確率が減ったことが挙げられる。

他には、嚥下障害を持つ患者さんへの食事内容の工夫や改善である。例えば、お正月でも誤嚥を起こしやすい餅などは避けて、安全なものが選ばれている。また正月に限らず、その患者さんに合った食事内容(形状)が選ばれるようになった。

しかしながら、刻んだ食事や、ペースト状の食事は食感が悪いため、かなり嫌う患者さんもいる。誤嚥を起こしやすい患者は、それが死因にもなりうるので食感の悪さはやむを得ない。

味だけでなく、食事を噛むことも食感の大きな部分であることが良くわかる話だと思う。

病院内で、突然誤嚥を起こしたら、吸引できる機器を使うか、あるいは、掃除機を持ってきて、無理やり口に入れて吸い込む。

これが簡単なようで簡単ではない。

その理由だが、ヒトは誤嚥して窒息しそうになると、顔が真っ赤になるほど歯を噛みしめて、口など開けようとしないからである。そのため、力ずくで開けて、上記の吸引できる機器を使う。

このような場面での対応は、精神科での看護経験の長い看護師が最も頼りになる。実践的だからである。

ある時、そのような場面に遭遇したが、自分はあまり役に立たなかった。病棟婦長が物凄い力で、自分の指で口をこじ開けて、掃除機(狭いところを吸い込む形状)を使い吸い出した。

全く、婦長はたいしたものだよ・・
と思った。

誤嚥したものが固形で比較的柔らかい場合(例えば芋類)の場合、喉の場所で砕いて吸い出した方が合理的だ。その際、掃除機に比べ医療用の喀痰を吸引するチューブは柔らかすぎて実用になりにくいのである。吸引力も最近の掃除機の方が遥かに上回る。

そうして何とか救命したが、病棟婦長の手指は血だらけであった。その血の一部はもちろん、彼女自身の出血によるものである、入れ歯などで指を噛まれ切傷)。誤嚥時のその人の強く噛む力は相当なものである。

自宅でお年寄りが誤嚥を起こした際に、救急車を呼ぶのはもちろんだが、そのまま何もせず到着を待っていたら、誤嚥して呼吸ができない場合、窒息死はほぼ間違いない。

自宅でできることは、家族がなんとか掃除機で吸い出す努力をすることである。

これは、家族が心停止の際に人工呼吸をするより救命率が遥かに高いと思う。心停止は疾患性のものだが、誤嚥は物理的な障害だからである。

自宅でなんとか救命しても、必ず病院にかかるべきである。その理由は、元気になりほとんど吸引できたように見えても、その後、誤嚥性肺炎が起こることが多いため。

おそらく、しばらく入院になるか、すぐに自宅に帰されたとしても抗生剤を処方されると思う。