お金を下ろしたことがない人 | kyupinの日記 気が向けば更新

お金を下ろしたことがない人

お正月に帰省した時、母親に聴いた話。最初に言っておくが、精神科とはほとんど関係がない。

母親の友人に、銀行からお金を下ろしたことがない女性がいると言う。銀行口座の残高は、なだらかに増えていくしかない。

なぜ下ろしたことがないかというと、詳しくは聴かなかったが、おそらくお金持ちで、夫の収入がかなりあり、下ろす必要がなかったものと思う。

きっと銀行口座から下ろすという作業は、夫しかしなかったのであろう。それも夫の口座なので、自分の口座は入金ばかりである。

ところが・・
ある日、入金したところ、銀行口座の残高が減っていたのである。


入出金が激しいとすぐに気がつかないこともあるが、その女性は下ろしたことがなかったので、すぐに気付いた。しかし、不審と思いながらしばらく放っておいた。(さすが・・)

そのうち、更に残高が減っていることに気付いた。

自分しか扱わない口座なのに、奇妙すぎる事件である。これが精神科の患者さんなら、解離が生じ、このような事態になることが稀にある。(多重人格のように)。

そこで、息子に相談し、その銀行の支店長に苦情を言いに行った。ここまでは普通の経過である。

しかし、驚くべきことだが、その銀行の支店長は明確な返事をしなかったのである。「貴方が下ろしたんだろう」と言った対応だった。本人には認知症などなく、未だかつて下ろしたことがない口座なのである。

そのうち、その銀行は他の銀行に吸収合併され、支店長も同じ市内にはいなくなった。

ある日、驚くべきことが起こった。

今まで下ろされていた金額が、全額まとめて口座に入金されていたのである(入金なのか振込みなのかは聴いていない)。

後からの推測だが、おそらく銀行員の横領があった可能性が非常に高い。しかし、その女性が警察に行き事件化させなかったので、こっそり返金したものと思われる。

謎の返金があったことこそ、不正が行われていた証拠である。また、これは良心から来る行為だだろうが、相手によればリスクも伴う。そこで、その女性は返金があったことを息子に相談した。

その息子の意見は、意外なものであった。

このことを告発したら、横領していた銀行員と支店長の2つの家庭を壊すことになる。かわいそうなので何もしないでおこう。

その銀行の出来事は、何も起こらなかったことになっている。