2013-09-29 13:55:48

ブプロピオンの作用時間の異なる剤型について

テーマ:ブプロピオン
今回の記事はやや特殊なものだ。

ブプロピオンは、現在のところ、唯一のノルアドレナリン及びドパミンの再取り込み阻害薬である。未だ、本邦では発売されていないが、今の流れだといずれ日本でも発売され、処方できる抗うつ剤の1つになるであろう。

ブプロピオンの良い点は鎮静がないことである。例えば、3環系抗うつ剤のトリプタノールや4環系のルジオミール、NaSSAのリフレックスは鎮静的な抗うつ剤とされている。これらに比べ、全くと言って良いほど鎮静がない。

また、SSRIでよく診られる性機能障害の副作用がない。また、中止の際に離脱症状が全くないと言われている。これは臨床経験と一致する。

特殊な利点として、禁煙の補助剤として使えることである。禁煙でのブプロピオンはZybanという異なる商品名で販売されている。一方、抗うつ剤としてのブプロピオンはWellbutrinという商品名で、アメリカでは既に1985年から販売されている。

ブプロピオンの1つのメリットとして催奇形性が低いことが挙げられる。ブプロピオンの催奇形性カテゴリーはBである。実は、抗うつ剤でBにカテゴリーされているものはほとんどない。

【B】
動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、人、妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠期3ヵ月の対照試験では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。


ブプロピオンのように古い薬がなかなか日本で発売されなかったのは、個人的な推測ではあるが、いくつか思いつくものがある。

1、ブプロピオンはドパミン系に作用するものであること。カプランの書籍では、「ブプロピオンはその分子構造が、アンフェタミンやダイエット薬のジエチルプロピオンに類似した単環系のアミノケトンである」と記載されている。このタイプの薬物はいかにも日本は嫌いそうである。実際、ブプロピオン治療中にアンフェタミンの尿検査の結果が擬陽性になったと言う報告が1つだけある。もしブプロピオンが日本で販売された場合、状況によれば、覚醒剤使用の証明ができず書類送検できない事態もあるかもしれない。日本では、覚醒剤使用は特に重大な犯罪なので、できればブプロピオンを発売したくない状況はある。(近年のパソコン遠隔操作事件以後、IPアドレスの証拠が曖昧になったことと似ている)

2、ブプロピオンは当初、アメリカで推奨処方用量が多すぎ、けいれん発作などの副作用が生じ、いったん発売停止になった経緯がある。(クロザピンに似ている)厚生労働省は常にこのようなことには慎重である。

3、日本に関して言えば、抗うつ剤のうちパキシルが長い期間、高いシェアを占め、それを脅かす抗うつ剤がなかった。パキシルとウエルブトリン(ブプロピオン)は同じグラクソ・スミスクラインの商品なので、成功するかどうかわからないような薬を、積極的に販売したくないという心理は働く(パキシルのシェアを奪ってどうするみたいな・・)。

現在、パキシルは日本でもジェネリックの時代に入ったため、上記の特に3について、グラクソも積極的に発売に動いてもおかしくない。

さて、ブプロピオンは3タイプの作用時間の異なる薬が発売されている。

1、ブプロピオン(即時放出型)
1日3回服用。即時放出型のブプロピオンは、胃腸管から速やかに吸収される。服薬後、2時間以内に最高血中濃度に達する。おそらくだが、この急速に血中濃度が上昇する性質は、初めて服薬する人にとって、SR(持続放出型)やXL(延長放出型)に比べ、効果を実感しやすいと言う臨床感覚がある。少なくとも、最初からSRやXLを始めず、即時放出型から開始すべきだ。その方が長い期間低空飛行を続けている人にとって、インパクトが大きい。

ブプロピオンSR(持続放出型)
1日2回服用。持続放出型の最高血中濃度は服薬後、3時間で現れる。従って、即時放出型とSRは時間が経つと服薬感覚の相違があまりない。服薬開始後、何ヶ月も経ち、ブプロピオンの存在感が減ってきたケースでは、朝1回ブプロピオンSR100mgまたは150mgだけ飲んでもさほど効果が変わらないことも多い。

ブプロピオンXL(延長放出型)
1日朝1回服用。延長放出型の最高血中濃度は服薬後、5時間で現れる。しかし、延長放出型の最高血中濃度自体は変わらないと言われる。ブプロピオンXL300mg錠の24時間トータルの薬物暴露量は、SR製剤の150mg1日2回と変わらない。ブプロピオンXLを朝1回服用する場合、夜の血中濃度が下がっているため、不眠の副作用が出にくくなる。しかし、賦活系薬物で不眠になりやすい人は剤型による差はあまりない。

意外に知られていないのは、パキシル錠とパキシルCRの半減期には相違がないこと。これは時に精神科医ですら勘違いしている。錯覚していると言うべきか。

ブプロピオンの血中の平均半減期は12時間(8時間から40時間)と言われている。おそらくだが、剤型による差は、さほどないのではないかと思われる。

アメリカでは、ブプロピオンには2つの適応しかない。1つがうつ病で、上記、3剤型のいずれも処方可能である。しかし、季節性感情障害では、XL(延長放出型)のみ適応を認められているようである。これはなんとなく理解できる。

季節性感情障害へのブプロピオンの用法について(アメリカ)
典型的な病型では、うつの徴候が出る前の秋に服薬を始める。最初はブプロピオンXL150mgを朝1回服薬。1週間後、忍容性を考慮し、可能ならXL300mgまで増量する。そうして秋、冬と300mgを維持する。春になると、XL150mg服薬を2週間設けて中止する。(この手法は予防的投与であることがわかる)

余談であるが、この話はアメブロメールで読者の方からの情報であるが、アメリカのうつ病患者が集まる掲示板で、「なぜこうも抗うつ剤が効かないのか?」という話で盛り上がっていたらしい。

その時、神のような実際の精神科医が現れ、「即時放出型や持続放出型ではなく、XLを服薬しなさい?」と言ったらしい。うつ病から浮上できない人は、XL製剤をしっかり飲んでおくのが最も良いんだそうだ。

この神のごとき精神科医の助言だが、実際にはそう簡単にはうまくいかない。しかし、うつ病には即時放出~延長放出型いずれも服薬できるので、剤型を変更するのも一考だと思われる。

アメリカでのうつ病に対する異なる3剤型の投与上限だが、種類によって異なる。

即時放出型(上限450mg)
SR(上限400mg)
XL(上限450mg)


しかし、日本人は欧米人に比べ、忍容性が低いため、300mgを超えて服用した場合、けいれんの副作用が出現しやすいのではないかと思われる。例えば、けいれんの既往がある人、頭部外傷の既往がある人、あるいはアルコール依存症や薬物中毒の人である。おそらく、本邦で認可された際には、上限が300mgになるような気がしている。

参考
ブプロピオンのテーマ
AD
いいね!した人  |  コメント(8)  |  リブログ(0)

kyupinさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

8 ■無題

http://www.clinicaltrials.jp/user/search/directCteDetail.jsp?clinicalTrialId=9526
下部にある2015年2月26日改訂のリンクをクリック

フェーズ3(第3相臨床試験 )
試験終了

http://www.gsk-clinicalstudyregister.com/study/113351?study_ids=AK1113351#ps
Study Recruitment Status:Completed

保険適用も近いのでしょうか。
心待ちにしています。

7 ■ブブロピオンの効果を実感までの期間について

はじめまして。海外に住んでいる者です。

5年ほど前から軽度のうつ症状に悩まされており、ずっとスルピリド(ドグマチール)を50㎎(1日)服用していました。

スルピリド自体は自分にはすごく合う薬だったのですが、長期間服用を続けると遅発性ジスキネジアになってしまうことを知り、薬を変えることにしました。

それで、病院の先生に相談をした結果、ウェルブトリン(XL 300㎎)を処方されたのですが、今日で服用して12日目になりますが、全然効果を実感できません。

この薬は飲み始めてから効果を実感できるまでには、一般的にどれくらいかかるのでしょうか?

古い記事へのコメントで申し訳ございませんが、ご意見を頂けますと幸いです。

6 ■無題

娘さんが精神を患らいカウンセリングは受けさせても精神薬は服用させない精神科医がいらっしゃるそうです。何故でしょう?

5 ■ブブロピオンって

本当に煙草を吸いたくなくなったりするのでしょうか?僕の知っている患者さんで精神薬(ブブロピオンとはまた別)を服用した途端に煙草を吸いたくなくなったという情報を聞いて羨ましいやら悔しいやらですが。一部では長期間飲み続けていると自殺願望もしくは既遂、不眠、悪夢等々が出現するとかで今一歩踏み出せないのですが。アルピニスト野口健さんの話ですが、エベレストには未だ300体程の遭難者の遺体が眠っているそうで、ある人は遺書や遺言でそのままにしておいて欲しいという本人の希望であり、もしそうでなくとも経済的な部分(登山料1人につき100万円前後)や悪天候(風速320Km/hの嵐etc...)を考えると断念せざるを得ないんだそうで。頂上で得られる達成感がどんなものであれ、生命の危機が目の前に迫っていたら引き返す勇気も時には重要な事です。この話がとても心に染み入る今日この頃。

4 ■XRではなく、XLが正しいです。

ご指摘ありがとうございます。本文を訂正しておきます。普通、3つの剤型は、

即時放出型
immediate-release

持続放出型
sustained-release

延長放出型
extended-release

と英語で記載されているので、XRと錯覚を起こしました。別に頭文字をとっているわけではないのですが。

3 ■無題

最近先生のブログを知り愛読させていただいてます。日本の国立大を卒業して10年、その後韓国で10年以上精神科をしている者です。こちらは日本と違って欧米の新薬が即効で入ってくるので選択肢が多く助かっています。多分無批判で導入するからでしょう。
ブプロピオンは3rdチョイス当りですが、ご指摘のように作用機序が違うのでいい武器になります。リタリンではありませんが、賦活させたいときに使っています。先生もときどきブプロピオンを使われるとあり、いい意味でちょっと驚いています。日本では通常国内で未認可の薬を使うドクターは稀なので。そこまで患者の為に努力をしようとはしませんよね。
あと、禁煙にも使いますが、やはりChampixのほうが効果大ではないでしょうか?教科書にもそう書いてますし。
こちらに来て日本の情報が不足してる分、先生のブログには感謝感激です。これからも愛読させていただきます。^^
PS:XRとありますが、XLの間違いではないでしょうか?

2 ■ザイパンの個人輸入

 2000年頃に禁煙補助薬としてザイパンの個人輸入を
考えたことがありました。結局2001年にニコレットが
販売開始されたので輸入はしませんでしたが…。
一度は禁煙に成功したのですが2009年に再禁煙する
際もういちどザイパンの個人輸入を考えていたら、
すでにチャンピックスが保険適用になっていたので
結局おせわにならずじまいでした。
 ニコチン依存症でうつを持っている患者は
チャンピックスでうつを悪化させるケースが多いので
2ndチョイスでザイパンが保険適用になればいいのにと
ずっと考えていたので、
パキシルの特許が切れたいま、グラクソが日本で
ブプロピオンを発売するという流れは理解できます。
日本でもDNRIが認可されて欲しいものです。

1 ■低空飛行から抜けたという感覚を持てること

以前のエントリーやコメント欄でも「インパクト」の話がありましたが、患者自身が「効いた」「良くなっている」という実感を持てることは、とても重要なことだと思います。

ブプロピオンの場合は、それがブプロピオン(即時放出型・・ということになるのですね。
禁煙補助薬としてのザイバンも、以前のエントリーを読んだ時に試してみたいと思った事を思い出しました。

喫煙=悪、みたいな今のご時世でパッチ剤とチャンピックスしか選択肢がないのは困ります。
そんなに積極的に禁煙したいとまで、本心から思っているわけではないけれど、喫煙が社会的なデメリット視をされている、そういうコンセンサスがほぼ形成されている現状は、無視しがたいものがあり…。

飲酒にはまだ優しい視線があるのにねぇ…と、お酒を全く飲めないわたしは思っちゃうんですけど。ふぅ…。

ともかく、厚労省にもグラクソにも、出来るだけ早く日本でも認可をするよう、積極的に動いて欲しいと思います。

もちろん抗鬱剤の選択肢が増えることも含めてです。とにかく、線を越えて鬱から抜けた、別の世界に行く・・という経験、実感がまず重要だと思います。

余談ですが、わたしがまだどツボにはまっていた頃、kyupin先生に一番感謝の念を覚えたエントリーは「赤と黒の壺」でした。わたしもいつかそうなれるかも・・と思わせてくれました。

コメント投稿

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。