最も辛いことは、困ったとき相談する相手がいないこと | kyupinの日記 気が向けば更新

最も辛いことは、困ったとき相談する相手がいないこと

過去ログでは、「精神科医は結局は独学」という恐ろしいフレーズが出てくる。(笑)

さすがに、これを最初に聴いたときはショックを受けた。

これはどういう意味かと言うと、精神科では、駆け出しの時ですら、適切な助言をしてくれる先輩がいない環境に置かれることが多いことを言っている。だから、人に頼らず自分で良い選択ができるように独学で学ばなければならない。

創意工夫は、苦境から生まれる。

何か調べものをする際に、注意したいことがある。それは、「統計を信用しないこと」である。もちろん100%信用しないわけではないが、バイアスが常に入っていると言う目で見る。

ちなみに、信用できないとされる3つのものは、確か、

1、新聞の記事。
2、統計。
3、女の涙。


だったと思う。何かの書籍で読んだものだ。これは例えばどのようなことを言っているかというと、過去ログに出てくる抗うつ剤のランキング、

有効性の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))
①ミルタザピン(レメロン)     24.4
②エスシタロプラム(レクサプロ)  23.7
③ベンラファキシン(エフェクサー) 22.3
④セルトラリン(ジェイゾロフト)  20.3
⑤シタロプラム(セレクサ)     3.4
⑥ミルナシプラン(トレドミン)   2.7
⑦ブプロピオン(ウエルブトリン)  2.0
⑧デュロキセチン(サインバルタ)   0.9
⑨フルボキサミン(デプロメール)  0.7
⑩パロキセチン(パキシル)     0.1
⑪フルオキセチン(プロザック)   0.0
⑫レボキセチン(Davedax)      0.0

受容率(忍容性)の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))
①エスシタロプラム(レクサプロ)  27.6
②セルトラリン(ジェイゾロフト)  21.3
③ブプロピオン(ウエルブトリン)  19.3
④シタロプラム(セレクサ)     18.7
⑤ミルナシプラン(トレドミン)   7.1
⑥ミルタザピン(レメロン)     4.4
⑦フルオキセチン(プロザック)   3.4
⑧ベンラファキシン(エフェクサー) 0.9
⑨デュロキセチン(サインバルタ)   0.7
⑩フルボキサミン(デプロメール)  0.4
⑪パロキセチン(パキシル)     0.2
⑫レボキセチン(Davedax)      0.1

この順位は、あまりにも臨床的な実感と一致していない。これは自分が言うだけでなく、たいていの精神科医が同じことを感じていると思うよ。

例えば、主な非定型抗精神病薬、リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、エビリファイ、ジプラシドンは治療効果において差がないとされている。しかも、それぞれの製薬会社の息がかかった研究では、必ずその製薬会社の薬が勝つオマケ付である。これはおそらく、処方の適切な用量を操作しうまく勝てるように設定するとか、あるいはうまく勝てなかったケースは発表しないんだと思う。

抗うつ剤のランキングなんて、個人差の前ではさほど意味がないが、このような研究結果は知っておいて損ではない。このように奇妙な順位になることすら、参考になるからである。(なお、この研究は信頼性が高いことになっている)

臨床経験で書籍の果たす役割は小さくはないと思うが、個々の事例で経験したことの方が遥かに今後に役立つ。過去ログでは、医療においては記憶が非常に重要といった記事もある。

結局だが、

医師になる学校はあるが、精神科医になる学校などない。

ということなんだろう。