血中濃度と精神疾患 | kyupinの日記 気が向けば更新

血中濃度と精神疾患

今回の記事では漠然と血中濃度と記載しているが、これは向精神薬だけではなく、向精神薬以外の薬物、食物の中の有益ないし有害物質、体内に恒常的に存在するホルモンなども含めることにする。

一般に、向精神薬では、服用し始めて血中濃度が一定に保たれ始めると、そうでない状況よりは治療的に作用することが多い。これは忍容性の低い人(つまり薬に弱い人)により明瞭に顕れる。1日の血中濃度が大きくブレることは不安定要因になるからである。

そのようなこともあり、製薬会社は、次第に長時間安定して作用を及ぼす向精神薬を研究し創薬している。例えばパキシルCRなどである。

一般の人には短時間に作用する薬の方が、なんとなく良い薬のように思われるであろうが、実は逆なのである。

向精神薬については、長時間型の方が優れていることが多い。これは向精神薬に限らず、降圧剤などもそうであろう。

一般に短時間しか作用を及ぼさない薬は1日の服薬回数が多くなる。これ以外にも、薬によれば離脱が生じやすくなり、中断しにくくなる。実際、長期型ないし離脱が少ないタイプの同系統の薬に変更後、中止ないし変更するなどが行われている。

長時間作用型の悪い点は、疾患のタイプによるとその時しか必要ないのに1日中効いていること。

その薬に副作用を自覚している人には煩わしいことである。このようなことはどういう際に生じるかだが、大学や会社でプレゼンテーションなどをする際に、非常に上がるような人。その際にさっと効く薬は本人にとって最高の薬と言える。

しかし、ベンゾジアゼピンの短期型が良いとも必ずしも言えない。その理由は次第に効果が以前ほど得られなくなる傾向があるから。またこのタイプの薬物の血中濃度の急激な変動は好ましくない。

向精神薬には何かしら欠点があり、全て良いとこ取りはできない。

PMSは精神症状が月経周期に深く関係しており、海外では例えばパキシルにはなく、パキシルCRのみに適応があったりする。これは一見、逆のように見えるが、日本人だと、パキシルを使うのであれば、いっそうCRの方が好ましいであろう。これもまさに良いとこ取りができない典型的な例である。

PMSの場合、このようなことを考えると、漢方薬かバッチフラワーなどのサプリメントが効けば最高だが、この程度の薬で寛解する軽いレベルにない人の方が多い。精神科医にかかる人はなおさらである。これは、PMSは、その患者さんが、内因性ホルモンの血中濃度の変動に過敏性を持つ?ことも関係ありそうである。

最近、急激に涼しくなり精神面で不調を来たす人が多い。特にここ数日は新患や入院が増えている。

日本は四季がはっきりしていることもあり、気候の変化が、体内のホメオスタシスに影響を来たすのかもしれない。これらに過敏性を持つ人にとっては辛い時期である。

一般に季節の変わり目は風邪を引きやすいと言われるが、精神科医にとっては精神疾患が顕在化したり再発したりしやすい時期と言う意識の方が高い。これは、子供の頃は思いもしなかったことだ。

精神科医は初春と初秋は忙しくなる時期なのである。

参考
ジェイゾロフトを毎週、1錠だけ貰う人
パキシルCR
「季節性嘔吐症」その後
貴方が来るのを待っていました