セレネースを基準とする等価換算 | kyupinの日記 気が向けば更新

セレネースを基準とする等価換算

アステラス製薬の抗精神病薬の換算表を見ていると興味深いことに気付いた。これは、EBMと専門家の広い意見調査に基づいた「エキスパートコンセンサスガイドライン」によるもので、いわゆる「100人に聴きました」的なアンケートのようなものである。色々な意見が集約されている。

本来、等価換算というのはどこを基準にするかで異なるものだと思う。それは抗精神病薬はD2レセプターのみに関わるものではないし、それ以外のもう少し曖昧な作用の集合体として薬理作用を及ぼすからである。また、副作用の大きさなどもアンケートであれば関係して来るような気がする。

このブログでは、当初はセレネースあるいはコントミン換算を記事の中で載せていたが、最近はあまりしなくなっている。

それは精神症状と抗精神病薬は相対的なものであるし、それに拘るのもどうかと思うからである。たいていの記事では一見、多剤見える処方でもコントミン換算になおせばたいした量ではないのもある。

今回のセレネースを基準とする換算では、

セレネース   1mg
セロクエル   100mg
エビリファイ  5mg
ジプレキサ   2.5mg
リスパダール  1mg
クロザリル   75mg
コントミン   60mg
フルメジン   1mg


これは従来のセレネースより高い力価に評価されている。それはリスパダールの比が1:1であることを見てもわかるだろう。この換算表の特徴だが、セレネースの量が増えるにつれ、力価が相対的に下がるように記載されている。

セレネース   5mg
セロクエル   325mg
エビリファイ  10mg
ジプレキサ   10mg
リスパダール  3mg
クロザリル   250mg
コントミン   250mg
フルメジン   5mg


これを見ると、セレネースが5倍になっているのに、他の薬でそうなっているものは少ない。エビリファイはたった2倍、リスパダールは3倍である。これはどういう意味かと言うと、見方によるが、セレネースは1mgではけっこう力価が高いが、増やすにつれてそこまで効果的ではないことを意味する(と思う)。

逆の見方をすれば、エビリファイは2倍に増やすだけで、セレネースを5倍に増やしたのと同じ効果が得られることを意味する。(そりゃ本当か?というのもあるが・・)

セレネース1mgから5mgまでで比較的増加率が似ているのは、定型薬のコントミン、フルメジン及び非定型のジプレキサである。

セレネース10mg換算では、また興味深い結果になっている。

セレネース   10mg
セロクエル   600mg
エビリファイ  10mg
ジプレキサ   20mg
リスパダール  5.5mg
クロザリル   425mg
コントミン   500mg
フルメジン   10mg


セレネース5mgから10mgへの増加の場合、2倍になっている比が他の薬も平行しているものが多い。つまり中等量を超えると、線形に増加することがわかる。つまりこの換算表は、「少量での効果の等価換算が高用量とは異なっているよ」といった感じかもしれない。

セレネースは従来リスパダールと換算で、2:1とか1.5:1などと言われていたが、上の換算では、1mgでは1:1、5mgではだいたい1.5:1、10mgでは2:1程度になっている。

今まで異なる換算表がいくつかあった理由の種明かしをした感じになっているのが面白いと思った。

参考
抗精神病薬の等価換算表