障害年金と生活保護 | kyupinの日記 気が向けば更新

障害年金と生活保護

精神疾患で働けないほどの病状が長期に続いている人は、障害年金の診断書を提出しアクセプトされると障害年金を受けることができる。ただ、この障害年金は基本的に内因性疾患、知的発達障害を対象としている面が大きく、神経症圏内は受給が難しい。(過去ログ参照)

いかにもこれは重いと見なされている器質性疾患も受給できる(脳炎後遺症、コルサコフ認知症など)。

広汎性発達障害の場合、単にニート状態程度では受給は困難と思われる。しかし、非常に激しい症状や、激しくはなくても重い症状がある場合(重いカタトニアなど)、うまく診断書を書けば受給可能である。これは審査する医師の裁量にもより、またローカルな面もある。

また広汎性発達障害の人でも器質性幻聴や器質に由来する被害妄想などが合併すると、操作的診断で統合失調症と診断され障害年金の受給が可能になる。こういうタイプは実際、病状が重いので障害年金を受けるのは妥当であろう。

障害年金の給付が始まると、2ヶ月に1度、年金が2か月分まとめて振り込まれる。

もし働けないくらい病状が重く、なおかつ障害年金が受給できない人は、家庭の収入状況にもよるが生活保護を受けることが可能である。これは決して怠けているわけではなく、精神疾患が存在しているというのが大きい。(生活保護の根拠としては十分)。

一般に単身者の場合、地方にもよるが(物価が異なるため)、月に10万円を少し超える程度が支給される。これは年金と異なり1ヶ月ごとである(重要)。

生活保護と障害年金の相違は、前者は医療費も無料になるが、後者はそうではないこと。実際、障害年金の人たちは窓口で診察料を支払っている。(自立支援法などで支払いは軽減されている)。

障害年金2級で加算が全くない人は、月6万5千円程度なので、これだけでは単身で生活できない。家族と同居なら、考え方にもよるが生活可能であろう。

もし障害年金2級で加算がなく、しかも単身で生活できない人は併せて生活保護を受けることも可能である。

この場合、総額が10万を少し超える程度に設定されるので、単に生活保護を受けているのとあまり変わりがない。しかし障害年金が優先される。(障害年金を受けられるのに、受けずに生活保護だけというのはないと言う意味)。

患者さんの意見では、生活保護はいろいろと面倒らしい。それは贅沢品が買えないからである。(いくらか干渉される)。今はインターネットやエアコンくらいは大丈夫である。

僕の患者さんでは、障害年金2級、月10万円(厚生年金を支払っていたため)に加え、福祉工場で約8万円の給料があるため、月当たり18万円の収入がある。だから家賃を払っても概ね生活できる。彼は車を持っているが、ここが生活保護との大きな相違である。

彼はほとんど寛解しているが、精神症状がいくらか残遺していることと、また福祉工場勤務なので、障害年金が切られることはおそらくないであろう。だいたい、福祉工場では障害年金1級の人もいるくらいである。

生活保護の場合、精神障害者保健福祉手帳を貰った方が良いのか?という問題がある。

その答えだが、「貰った方が良い」。障害者手帳を持っていると、更に月当たり1万数千円の加算があるからである。(級によりこの額は異なる。外来患者さんの場合1級は難しい。普通は2級以下)

また、携帯電話料金の割引など、近年はかなりサービスが広くなっている。また美術館や映画館でも割引が行われている。

生活保護では、いわゆる特殊に高度な医療は受けられない上、最寄の病院にかかるのが基本である。

例えば脳が特別に悪いかもしれないので、PETでもMRIでも良いから徹底的に大学病院で調べてほしいというのは到底受け入れられない(たまに統合失調症や典型的なアルツハイマーの患者さんで、家族からそういう希望がある。臨床所見で十分である。というのと、そんなことをしていると国が倒れる)。

ただ精神科の場合、いくらか特殊な扱いであり、結果的に遠方の病院に入院することもある。どこの病院も満床だったので入院する病院がそこしかなかったということもあるから。また、ずっと昔、家族が世間体を気にしてかなりの遠方の病院に入院させたものの、そのうち世帯を分離し生活保護になることもある。

一般的には生活保護の人は車を持たないため、定期的に通うなら自然と最寄の病院にかかることになる。(精神科の場合、少し遠くでもバスで通える範囲なら大丈夫であろう)

参考
障害年金のテーマ