Barbarism Begins At Home(The Smiths) | kyupinの日記 気が向けば更新

Barbarism Begins At Home(The Smiths)


Begins At Home(The Smiths)

Barbarism Begins At HomeはThe Smithsの2ndアルバムMeat Is Murderに収録されている。The Smithsのオリジナルアルバムは4枚あり、

The Smiths (1984年)
Meat Is Murder (1985年)
The Queen Is Dead (1986年)
Strangeways, Here We Come (1987年)


不思議なことに彼らの最高傑作アルバムについて意見が分かれている。個人的には、Strangeways, Here We Comeを挙げたいが、実はすべてのアルバムで、これが最高傑作という意見があるのである。

一般的には、The Queen Is Deadを推す声が多いが、確かにこのアルバムには名曲が多く含まれている。スミスのメンバーはStrangeways, Here We Comeが好きらしい。実はデビューアルバム、The Smithsにも名曲が多いので、これを推す人もいる(これも個人的に理解できる)。

このファーストは低予算で作られている上、最初のアルバムだったこともあり、これが最高傑作と言われると、モリッシーが怒るらしい。モリッシーによれば、自分はだんだん上手くなっているので、最初のアルバムがベストなんてありえないという。(その理由で彼の考えるベスト盤はStrangeways, Here We Comeなのであろう)。

セカンドのMeat Is Murderもこれがベストだという意見がある。たぶんアメリカで有名なHow Soon Is Now?が収められているからであろう。僕はどのアルバムも相当に出来が良いと思う。Meat Is Murderは面白いタイトルだが、モリッシーとマー(ギタリスト)がベジタリアンというのが関係している。

Meat Is Murder =肉食は殺戮だ。

kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)

と言った具合である。このMeat Is Murderのアルバムジャケットはたぶん?東南アジアの兵士の写真が描かれており、しかもヘルメットにMeat Is Murderと書かれている(これにはワロタ)。兵士なのは殺戮にかけているんだと思われる。実際、モリッシーはメンバーが肉を食べているのをファンやマスコミに目撃されるのを禁じていたと言う話もある。またソロになってからもライブ中にバーベキューの臭いが漂ってきたことに気分を悪くし、突如ステージを降りてしまったというエピソードもあるらしい。

一番上のライブ映像Barbarism Begins At HomeはMeat Is Murderとは直接には関係がない。ザ・スミスの楽曲はビデオクリップが非常に少ない。だからライブ映像がほとんどであるが、これはモリッシーがビデオクリップを作り商業的に売るのを嫌がっていたことや、レコードやCDだけで十分メッセージは伝わると考えていたことと関係がある。まあ彼なりのこだわりなのである。そのため、商業的なものに影響されない個性の強いアルバムばかりに仕上がっているが、これこそ彼らの作品の良いところであろう。

Barbarism Begins At Homeでは、特に理由がなく、意味不明に叩かれる子供たちについて歌っている。(日常的に起こっている幼児虐待)

いつだったか過去ログで、親からビンタされているような家庭はクラスの中でうちしかなかったという内容のエントリをアップしている。当時、その事実にビックリし「うちの家は近代化していない」、つまり、うちの家だけ遅れており前時代的だと思った。

ところが、あれから何十年も経ち、当時の子供が親になる世代になっても、虐待的な体罰がなぜか多く存在しているのである。たぶん自分が精神科医にならなかったら、そこまで問題意識を持たなかったと思う。

現代でも、メチャクチャな嫁姑関係や家庭内の幼児虐待は存在する。現代社会では、さまざまなものがコンピュータ化され、しかもCPUはどんどん早くなっているが、人間の進化が全然追いついていない。過去から学んでいない。これはひょっとしたら、キリストが生まれた当時から、人間ってたいして賢くなっていないのではないかと思ったりする。

ところで、上の楽曲はMeat Is Murderが発表されるずっと以前、1年以上前から完成していたらしい。1983年12月、ロンドンのエレクトリック・ボールルームで最初に演奏されている。その後、ロイヤル・アルバート・ホールでの演奏の際には、ピート・バーンズ(デッド・オア・アライブ)がステージに上がり一緒にデュエットしたという。その後、この楽曲はライブでのハイライトの1曲となった。

演奏についていえば、アンディ・ルークの素晴らしいファンク・ベースが聴ける。この楽曲は彼のベースの役割が非常に大きい。(モリッシーは背が高く、皆すぐにわかると思うが、小顔でかわいい感じの少年がジョニー・マー(ギタリスト)である。このライブは床から見上げるようなアングルでアンディ・ルークが撮られている)

ザ・スミスの楽曲はワンパターンで幅がないようなことを言われるが、こういう楽曲もあるのである。これはスミス結成以前、アンディ・ルークがジョニー・マーと組んでいたバンド、フリーク・パーティにかなり影響を受けている。

また、モリッシーの歌い方も技巧が駆使されていると思う。曲も良いが、彼の子犬のような吼え方も気に入っている。

あと、この映像ではモリッシーはズボンの後ろポケットに黄色い花を入れている。この黄色い花はもちろんグラジオラスである(たぶん)。たまにチューリップを入れていることもあるので(これにはワロタ)、花言葉とか難しいことは考えていなかったのではないかと思う。

モリッシーはマスコミからなぜ花を使うのか聞かれたことがある。彼によれば、崇拝するオスカー・ワイルドがいつも花を使っていたからだという。

モリッシーは毒舌なんだけど、笑えるというかユーモアやウイットがある。実際、Barbarism Begins At Homeの歌詞ですらユーモアを感じる。このユーモアやウイットはたぶんオスカー・ワイルドから学んだのであろう。彼は、オスカー・ワイルドほど悲劇的な人生を送った人が、ウイットに富んでいるのは驚くべきことだと言う。

花についてだが、モリッシーは、

I really do mean it when I shower people in flowers. They appreciate the honesty in the act. It was something I felt compelled to do because the whole popular music scene had become so grey and dull I thought something had to be injected, and flowers were just a very sensible injection.

などと話している。彼は、ミュージックシーンが、灰色で退屈になっていたので、花を投げかけたのだという。つまり花を持ち込み、空気を変えようとしたのであろう。


The Boy With The Thorn In His Side(The Smiths)The Queen Is Deadに収録。邦題「心に棘を持つ少年」この歌詞の最後の部分に注目。


Hand In Glove(The Smiths)彼らのファースト・シングル。ストロベリー・スタジオで、わずか数百ポンドで録音されたと言われる。B面はHandsome Devil。