もう1つの世界 | kyupinの日記 気が向けば更新

もう1つの世界

僕は毎週、ある総合病院にリエゾンに出かけているが、そこには精神科のまたもう1つの世界があると思う。というのは、ほとんどの患者さんは自分が望んで精神科に受診しているわけではないからだ。

一般の精神科病院の外来でも病識が欠如している人がいて、家族に同伴されて初診する人もいるが、実はこのような人はかなり少ないのである。現代社会ではむしろ稀と言って良い。これは一般の人の精神科のイメージとは異なっているかもしれない。

精神科病院であれ、精神科クリニックであれ、ほとんどは本人が決断し初診している。これはたぶん精神科クリニックでより確率が高いはずだ。


総合病院のリエゾンの初診は高齢の患者さんが多く、これは統計をまとめたわけではないが、感覚的には、

1、 高齢患者さんの夜間せん妄
2、 やはり高齢患者さんのうつ状態


の2つが最も多い。もちろん「せん妄」と言っても、いろいろな原因があるので漠然としているが、病態的にはこれが一番多いのである。もちろん本人が受診を希望するような病態ではない。

うつ状態もこのような病院の場合、主治医や看護師がうつ状態に気付き、おっかなくて見ていられない、くらいの理由で紹介になることが多い。本人から精神科を受診したいというパターンは稀だ。

結局は主治医か看護師が異常に気付き、受診を決定する事が多いというのが、精神科病院の初診の人と異なっている。実はこの点で問題が生じるのである。そういうケースでは僕は家族の了解を得るように伝えているが、稀に精神科医に診せないで良い(診せたくない)と言う家族も存在するのであった。

あらかじめ紹介状のファックスを貰っていて往診日に病棟に行ってみると、看護者から、「家族が断ったので診察は中止になりました」と言われることがある。僕は初診があるとそれなりに忙しいので、診察がないならないでかまわないのだが、その理由が非常に気になる。

家族が受診させない理由の例

1、 うちの婆ちゃん病院では眠れなくても、家では眠っているから良い。
2、 精神障害者ではないから良い。
3、 あの人はもともとそういう人だから良い


など。
なんというか、思わず笑ってしまうような理由であった。特に上の1は、看護者は夜間その人のために大変な苦労をしていたのでカンカンであった。

家族が人のことを全然考えていないのがちょっと・・なのである。