リーマス1000mgの薦め | kyupinの日記 気が向けば更新

リーマス1000mgの薦め

リーマスは、双極性障害で最も使われている薬物でエビデンスも揃っている。このエントリでは統合失調症に対するリーマスの扱い方については触れない。(いつかデパケンRと一緒に取り上げたい) 今回は純粋に双極性障害、あるいは非定型精神病へのリーマスの処方に限って話したい。とはいえ、たいした話ではないのであるが。

リーマスが処方されている患者さんが転院してきて、その人が双極性障害の場合、なぜかリーマス600mgというのが多い。もう少し言えば、

リーマスが600mgでしかも治療域に達していない。

のが多いのである。これはきっと600mgが朝昼晩1錠ずつで処方しやすいからだと思う。血中濃度もあまり真剣にチェックしてはいないんだろね~

リーマスは実は「600mgと1000mgでは大違い」というのが多い。だから、リーマスが使ってあって不十分な人たちはぜひ1000mgまでトライしてほしい。本当は1200mgと言いたかったのであるが、1000mgの方がカッコイイでしょ。数字の並びが。

双極性障害の人でリーマス600mgで不十分な場合、たいていデパケンRが併用されており、しかも人によればテグレトール、リボトリールなど3点セットまたは4点セットになっている。これはまだマシだ。更にロドピン、バルネチール、セロクエルなどの鎮静系の抗精神病薬が併用になっているため、副作用が生じ、その副作用止めも山のように入っていたりするのである。

こういう人はリーマスを1000mg使ってみると、運が良いとリーマス以外の薬が一掃できたりする。しばらくして安定すると、再びリーマスを減量していくのである。いったん1200mgで維持してもその後600~800mgで済む人たちもいる。

こういう手順を踏まないから、双極性障害が複雑な多剤併用になってしまうのである。この言い訳が「あの人はボーダーラインだから・・」とか、「リーマスが十分に効かないから」くらいになっていることが多い。

なぜ双極性障害の治療を徹底しない?と言いたい。

僕は過去ログでリーマスの神経毒性に触れているが、いったん使用する以上、600mgも1000mgもそうは変らないと思うぞ。

リーマスを1000~1200mgくらい処方すると、血中濃度は1mEq/l前後になることが多い。この程度使ってしかも1ヶ月くらい漬物を漬けるようにじっと待つ。

そうすると、あら不思議、人が変ったように寛解する人がいるのである。

非定型精神病で周期性に夢幻様状態を呈する人々の中で、リーマスで一発で寛解する人たちが存在する。僕が「悪性症候群の謎」で紹介した周期性に悪性症候群を呈する人はリーマスですっかりその周期性増悪が治まった。

実は、リーマスは悪性症候群には相性が悪い薬物なのだが、非定型精神病では非常にうまくいく場合があるのである。しかし残念ながら、そうならない人もいる。むしろリーマスでうまくいかない人の方が多いくらいだ。しかしうまくいく人ではその寛解ぶりが素晴らしいのである。

あと双極性障害で周期性に倦怠感や眠さで動けなくなる人、あるいは単に周期性の傾眠状態、あるいは周期性の味覚異常、これもリーマスは奏功する可能性を秘めている。

問題なのは、リーマスが合っているのに600mgではさっぱりと言うのがあること。だから精神科医に見落とされてしまうのである。

この見落としは、チョンボに等しい。

(終わり)