アモバン、マイスリーと不眠症 | kyupinの日記 気が向けば更新

アモバン、マイスリーと不眠症

一般にベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、レム睡眠と深い睡眠を抑え中程度の睡眠を増加させる。だからベンゾジアゼピン系の睡眠薬で眠った場合、あまり夢を見ないし、深く眠った感じも得にくい。しかし、アモバンとマイスリーはそうではない。これらはレム睡眠を抑えず、しかも深い睡眠への影響もほとんどないらしい。このようなことから、同じ眠剤を飲んで寝るにしても、アモバン、マイスリーはわりあい自然な睡眠が得られることがわかる。

これらの相違はω受容体が関係している。脳内にはω1およびω2受容体が存在しており、一般のベンゾジアゼピンはさほど選択性がない。ω1に選択性が高いマイスリーなどの眠剤は鎮静・睡眠作用が強く出て、反面、抗不安、筋弛緩作用が少ない。抗不安作用を持たないところがベンゾジアゼピンっぽくないのである。

だから、一見同じように見える超短期作用型のハルシオンと比べても、副作用の点でかなり相違がある。最も大きいものは、やはり抗不安作用の有無と夢だと思われる。

ハルシオンはマイスリーほどω1に選択性がないため、筋弛緩作用や抗不安作用を持ち、しかもレム睡眠を抑制する。だから、不安感や恐怖などの症状がある人はハルシオンの方がそれらの症状を抑えたいならむしろ良いという場合はある。レム睡眠についてもハルシオンは抑えるので、急に中止したときにその反動で多夢傾向になりやすい。また悪夢をよくみる人も、マイスリーのように夢に影響が少ない薬より夢を減少させる従来型のベンゾジアゼピンのほうが良いケースもある。

ω1タイプの眠剤は、マイスリー、アモバン、ドラールなどがそうであるが、ドラールは活性代謝物にそこまでの選択性がないらしく、ピュアなω1タイプとまでは言えないのかもしれない。

マイスリーは純粋に不眠症の適応しか与えられず、統合失調症やうつ病に適応がないのもこういうことも関係していると思われる。マイスリーは「不眠」の改善のみに特化しており、ベンゾジアゼピンっぽくはないのである。