トリプタノール30mgのおばあちゃん | kyupinの日記 気が向けば更新

トリプタノール30mgのおばあちゃん

定期的に行っている病院で、おばあちゃんの診察を頼まれて、最近はずっと僕が診ている。この人、もう5~6年前に突然うつ状態になり内科医からその病院に転院となっていた。初診時にトリプタノール30mgが処方されてそのまま。僕が頼まれた意図は、そのトリプタノールで良いかどうか、あるいは減量、中止できるかなどである。

患者さんを診察したところ、典型的な循環気質の人で内因性の色彩が強いと感じた。もう83歳なのに、体も丈夫で矍鑠としている。ハキハキと喋って全然ボケもなくて溌剌としていた。いつもよくお出かけをしているのだという。

彼女は精神科で治療を受けてから、とても食事が美味しくなったのだという。それまでは胃がずいぶんと悪くてあまり食事がいけなかったらしい。治療以前は46kgだったが、今は50kgで安定している。こう言いつつ笑っていた。

薬をどうするかだけど、この人に関してはこのままの方が良いと思った。現況、トリプタノールのマイナスがほとんどないし、どうもトリプタノールのために長生きしているようにも見えるから。

彼女の場合、薬をやめてしまうと、うつ状態が再燃する可能性があるというより、なんとなく活力が落ちて、今のようなエネルギッシュな生活はできないと思う。そういう時に、偶然、うつ状態に陥り、自殺するかもしれない。そういう感じの人なのである。

彼女自身に薬を減らすことにはとても不安があるようであった。この人、同じように見えてもたぶんSSRIとかだとこういう風になっていないと思うよ。それに、彼女はパーソナリティから考えて躁転する危険性もあると思うのだが、これまで5年以上、そうなっていないので今後もそうならない可能性が高い。

あの時、抗うつ剤で治療されなかったら、このおばあちゃんは何か病気になって死んでいたような気がする。

発病当時の胃の悪さだけど、これはうつ状態から来るものが大きいと思うよ。老年期に出現するうつ状態には、消化管にまつわる不快感、疼痛、妄想が多い。例えば、便の愁訴だとか、入れ歯の不具合だとか、あるいはこの人のような胃部の痛みや不快感などもそうだ。

結局、このおばあちゃんは、一生、トリプタノールを服用していた方が良いと思った。