お坊さん | kyupinの日記 気が向けば更新

お坊さん

先日、「精霊」というエントリを書いたが、それに似たような体験を思い出した。これは全く忘れてしまっていたものだ。もうずいぶん前で、たぶん精神科医になって1年目だったと思う。 

アルバイト先に、あるお坊さんの患者さんが来院していた。彼は統合失調症であったが、なんとか住職としての仕事はしていたようであった。話を聞く限りでは、なんとかどころか全然、仕事には支障がなかったような気もする。あるとき、そのアルバイト先の院長に相談に来ていた。その話を横で聞いていたのである。彼の話は、

「友人がある事件に巻き込まれて困っているので、自分が裁判で証言をしたい。なんとか救ってやりたい。」

というものであった。彼は判断力についてはそう悪いとは思えなかったが、なにしろ精神科医になって数ヶ月目なので、その感覚には自信はない。少なくとも、その事件と言うのは妄想でも何でもなく、実際に起こった事件であったようだ。直後の院長の話によれば。

院長は、
「あなたの気持はわかるが、裁判に出て行っても、精神病ということで証言は採用されないだろう」

と言った感じで、証言は止めるように説得していた記憶がある。客観的にみて、裁判に出て行っても、むこうの弁護士にいじめられるだけだと思った。

この時、お坊さんの話を聞いていた時、何か心が洗われるようななんとも言えない清々しい気持になった。ああいう特別な体験はうまく言葉で言い表せない。そのお坊さんの信仰心もさることながら、

きっと、この人は清く正しく生きておられるんだろう。

漠然とそんな風に思ったのである。

参考
精霊