攻撃的婦人と電撃療法 | kyupinの日記 気が向けば更新

攻撃的婦人と電撃療法

このブログを読むと、すごく電撃療法(ECT)をしているように思われるかもしれないが、実はそれほどではない。自分の判断で行うケースはかなり少なくなっている。

今年になってECTをしたのは1名だけでそれも1回ほどだ。この患者さんは深く腱に至るまでのリストカットをしたことと、その後の不穏が酷かったのでやむなく実施した。1回で見違えるようにうつ状態は良くなったが、この人はいつもそうなのである。

先日、来院されたある婦人は何年か前に初診したが、その時、これは相当に危ないと思えるほどの希死念慮があった。家族歴を聴くと、ちらほら自殺者がいたので僕はECTをすべきと思った。なぜなら、入院はしないと言っていたからである。

この女性は初回のECTで90%以上寛解したので、かえって躁転が不安になった。2回目をかけると、躁転する危険性が50%くらいあると感じた。ECTは時に1回で躁転させることもあり、こういう風に良くなり方が急激な場合、慎重な対応が必要なのである。

結局、まだ少しうつ状態ではあるのだが、ECTの2回目は中止し、パキシルによる薬物治療を始めた。アモキサンやトリプタノールなどの強い古いタイプの抗うつ剤は避けた。ここでなぜパキシルなのかというと躁転の危険性が低いのと、もうかなり良くなっているのでパキシルで十分と思ったことがある。

もし絶対ECTはダメだといわれたなら、できる限り入院治療を説得し、できないならアナフラニールくらいの点滴を開始しアモキサンかトリプタノールで治療していただろう。

その後、もう何年もなるが、未だにパキシル20mgだけは服用している。長い経過中、1回だけ軽いうつエピソードがみられたが、躁転はみられなかった。近年は表情も全然明るいのである。どうも、このようなタイプの人はパキシルを服用する意義さえ疑問に感じる。

この人は一般には「内因性うつ病」なのであろうが、アンダーグランウンドの双極性障害(2型)のようにも見える。理由はECTで変化が大き過ぎることや性格が循環気質であることが根拠である。

いつだったか来院した時、「今度、お店を出すんですぅ」とか言っていたが、こういうやり手というか、人生に対して「攻撃的婦人」な点も、そういう風に感じるところである。性格的にも話しているとすごく思うが、とてもサバサバしている。とても判断が早い。(一般に、うつ状態の人は迷ってなかなか決断できない)

つまりだ。双極2型の軽躁があまりにも軽く、普通の性格の範囲くらいに思える「うつ病」、実は本質的に「躁うつ病」患者も存在しているのである。

この攻撃的婦人だけど、初診した日も含め、その直前が自分がどうだったのか、よく思い出せないらしい。すべてはECTとともに流れていってしまった。僕は彼女自身と同伴してきた友人にも了解を取って、ECTを実施したのであるが。

こういう人を良性の「攻撃的婦人」と呼びたい。これは攻撃的婦人ファンのテリ造氏やブミ氏もぜひ知っておいてほしい。

参考
攻撃的婦人