プレコックス感はなくなるのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

プレコックス感はなくなるのか?

プレコックス感は、薬物治療により次第に薄まるというか、目立たなくなることがある。社会復帰を果たしていて、それなりに適応している人でもはっきりプレコックス感が残っている人と、ほとんど気付かないほどに減っている人に分かれる。プレコックス感が残っている人ほど、より社会適応が劣っているわけでもない。

僕は、ジプレキサやエビリファイが奏功している人はプレコックス感もかなり薄まっていると思う。セロクエルは、そこまではないがまあまあと言ったところ。ルーランもそんな効果があると思うことがあるがジプレキサほどではない。正直言って、ルーラン、セロクエルはやや弱い。それに対し、リスパダールはプレコックス感に影響が乏しいと思う。この意味でもリスパダールは非常にハロペリドール的薬物という感覚がある。おそらくジプレキサが奏功しても、心眼で見ればすべてプレコックス感が残っているのかもしれない。しかし、精神科医が心眼で診ないと判別できないようなプレコックス感なら、残っていたとしても、もうプレコックス感を云々する意味がない。

うちの病院の外来患者さんで、同じような年頃の20代前半の女性患者さんが3人いる。全員とても綺麗な人たちなのである。3人とも、一時は幻覚妄想が酷く入院歴がある。(特に3人目の子は計3回、のべ1年の入院歴)

1名はルーランとセロクエルの併用。1人はエビリファイとセロクエルの併用。1名がエビリファイとプロピタンの併用であり、誰1人として単剤治療ではない。量はかなり少ないけど。(エビリファイは6mg以下、セロクエルは150mg以下)今は、全員幻覚妄想はみられない。

3人のうち、前者2人は明らかにプレコックス感が残っている。3人目は全然それがないので、たぶん、3人目の子は統合失調症ではないのだろうと思う。僕が、外来担当の看護師さんたちにそのことを話したら、誰にもその見分けがつかないのだそうだ。「え?、先生はわかりますか?」といった具合。

「誰も気がつかないなら心配しなくてもいいね。でも僕は非常に気になる」
こんな風に思うのは、僕がプレコックス感を感じるので、僕にとっては心底治っていないという感覚に陥るのかもしれない。たぶん、最初の1人の子はエビリファイを処方すれば、プレコックス感が減少する可能性があると思っている。(女性にはジプレキサは肥満するので使いたくない気持ちがあるから)

しかし、もう退院して2年近く会社に勤めており、日常生活にも社会生活でも全く支障がないので、エビリファイを使うなんて危険なことはできない。職場で誰も彼女が精神科の病気なんて気がつかないだろうと思う。現代社会の統合失調症は薬が良くなったこともあり、一般の人が考えている以上に断然良くなるのである。

2人目の子は、エビリファイを処方し始めてだんだん顔が変わってきた。明らかにプレコックス感が薄れつつあると思う。毎月、良くなっているのがわかる。まだ治療を始めて半年もいかないくらいなので、まだこれからも良くなるような気がしている。2剤併用になっている理由だが、セロクエルとエビリファイはともに安定感のない信頼性の乏しい薬物と思っているので、単剤治療は怖すぎるのである。エビリファイ、セロクエルの組み合わせは、弱い薬を弱い薬でカバーしているようで笑えるのであるが、これでもどちらか1つだけよりはマシな気がしている。